今回は、JR横須賀線について紹介します。

横須賀線とは?運行区間・停車駅は?

横須賀線の電車、E217系Y-141編成
横須賀線の電車(E217系)

そんな横須賀線ですが、まずはどんな路線なのでしょうか。

横須賀線は東京駅から神奈川県横須賀市の久里浜駅までを結ぶ路線が、一般的に「横須賀線」と呼ばれています。

しかし、正式には東京〜大船間は東海道本線となっており、横須賀線の正式区間は大船〜久里浜間のわずか23.9kmのみです。

横須賀線の電車が走る線路には横須賀線の電車だけではなく、大宮・新宿方面からの湘南新宿ラインと埼京線の相鉄線直通列車、さらに成田空港方面への特急「成田エクスプレス」や、新宿方面から東海道線を経由し、伊豆方面へと直通する特急「踊り子」「サフィール踊り子」、また小田原を始発・終着とする東海道線の通勤特急列車「湘南」なども走っています。

大船まではもともと貨物列車が知っていた路線を使っている?

品鶴線区間にある武蔵小杉駅に到着する横須賀線の電車、E217系Y-104編成
品鶴線区間にある武蔵小杉駅に到着する横須賀線の電車

そんな横須賀線ですが、品川~大船間はもともと貨物線だった線路を使って走っています。

そのうち、品川〜鶴見付近までの区間は品鶴線という別称がある、もともとは貨物列車が走るために作られた路線です。

この貨物用の路線が転用される前の横須賀線は東京〜大船間で現在、東海道線の旅客列車、現在の上野東京ライン経由の列車が主に使っている線路を使っていました。

しかし、1960年代〜70年代の横須賀線は高度経済成長期の真っ只中であったため、東海道線と並んで混雑が著しく200%以上を超える混雑でした。

当時の国鉄の路線では東海道線・横須賀線、中央線、東北・高崎線(宇都宮線&高崎線)、常磐線、総武線などが東京都心から郊外、郊外から東京都心への輸送を担っており、高度経済成長期真っ只中であることと合わせて、「通勤地獄」と称される深刻な物となっていました。

これを重く見た国鉄は「通勤五方面作戦」と称される輸送力増強プロジェクトを立ち上げました。

その中で、横須賀線と東海道線は当時同じ線路を走っていて、お互いの路線でそれぞれ増発をすることが不可能に近い状態でした。

この状況を打破するために国鉄は「MS分離」と呼ばれる横須賀線と東海道線を分離させようとしました。

ちなみにMS分離の由来は、東海道線列車の列車番号末尾がMだったこと、横須賀線電車の列車番号末尾がSだったことに由来します。

列車番号末尾がMの東海道線列車、E233系3000番台NT2編成
列車番号末尾がMの東海道線列車

このMS分離では、羽沢方面に迂回する現在の東海道貨物線を新たに建設し、武蔵野線とそちらに貨物列車を迂回させたうえで、横須賀・鎌倉方面からの横須賀線電車を、当時貨物線であった品鶴線へと移すことで、小田原・藤沢方面からの東海道線列車の増発に繋げました。

そして、この頃から横須賀線の電車は品川付近〜東京間が地下トンネルで走行するようになり、更にルートは西大井や新川崎を経由するルートとなり、東京駅から先は錦糸町・千葉方面へ向かう、総武快速線と直通運転をするようになりました。

横須賀線(東京~久里浜間)の停車駅

駅名よみかた普通接続路線
東京とうきょう総武快速線(多くが直通運転)
東海道新幹線
東北新幹線
(北海道・秋田・山形新幹線)
上越新幹線・北陸新幹線
宇都宮線
高崎線
東海道線
上野東京ライン(宇都宮線・高崎線・常磐線)
山手線
京浜東北線
中央線(快速電車)
京葉線(武蔵野線)
東京メトロ丸ノ内線
新橋しんばし山手線
京浜東北線(日中の快速は通過)
東海道線
上野東京ライン
東京メトロ銀座線
都営地下鉄浅草線
ゆりかもめ
品川しながわ東海道新幹線
山手線
京浜東北線
東海道線
上野東京ライン(宇都宮線・高崎線・常磐線)
京急線
西大井にしおおい湘南新宿ライン(高崎線系統は原則通過)
埼京線(相鉄線からの列車)
武蔵小杉むさしこすぎ湘南新宿ライン
南武線
埼京線(相鉄線海老名方面直通列車)
東急東横線
東急目黒線
新川崎しんかわさき湘南新宿ライン(高崎線系統は原則通過)
横浜よこはま東海道線
上野東京ライン
湘南新宿ライン
京浜東北線
根岸線
横浜線(根岸線直通電車)
京急線
東急東横線
相鉄線
みなとみらい線
横浜市営地下鉄ブルーライン
保土ヶ谷ほどがや湘南新宿ライン(高崎線系統は原則通過)
東戸塚ひがしとつか湘南新宿ライン(高崎線系統は原則通過)
戸塚とつか東海道線
上野東京ライン
湘南新宿ライン
横浜市営地下鉄ブルーライン
大船おおふな東海道線
上野東京ライン
湘南新宿ライン
根岸線
湘南モノレール
北鎌倉きたかまくら湘南新宿ライン
鎌倉かまくら湘南新宿ライン
江ノ電
逗子ずし湘南新宿ライン
京急逗子線(逗子・葉山駅)
東逗子ひがしずし
田浦たうら(前寄り1両目+2両目1番前の扉は開かない)
横須賀よこすか
衣笠きぬがさ
久里浜くりはま京急久里浜線(京急久里浜駅)

横須賀線は電車の本数が少ない?

横須賀線は混雑が激しい路線

逗子駅に入線する横須賀線の電車、E217系Y-140編成
横須賀線の電車

横須賀線は新型コロナウイルス感染症が流行するパンデミックが起こる前、武蔵小杉から西大井に向けての区間で混雑率が190%超えとなっていました。

2018年度、2019年度の数字では総武線各駅停車や東海道線、東京メトロ東西線、日暮里・舎人ライナーと並んで混雑の順位はワースト5入りとなっていて、2018年度は197%、2019年度は195%という数字を記録し、いずれも東西線に続いてワースト2位という数字でした。

…というのは建前で、実際は湘南新宿ラインの乗客もカウントされ、なおかつ湘南新宿ラインの本数が調査に含まれていないらしく、実態としては150%ほどの混雑率となるようですが、それでも混雑率がすごいのには変わりないと思います。

この混雑率が高い原因の一つとして、横須賀線が他の主要路線よりも本数が少ないことが挙げられます。

横須賀線は電車の間隔がまばら

横須賀線の直通先である総武快速線も新小岩〜錦糸町間で181%と横須賀線と引けを取らない混雑率ですが、総武快速線の場合はラッシュ時間帯には1時間に10本以上の高頻度で運転されている中、横須賀線は総武快速線より2本少ない8本しか運転されていません。

また、総武快速線はラッシュのど真ん中の時間帯となる7時台では19本ですが、横須賀線は2019年以前は10本、2019年改正以降からは11本の本数で運行されています。

朝ラッシュ時には10分近く列車の間隔が空き、日中時間帯は20分ほど、列車間隔が空いてしまう時間帯があり、これが混雑の原因では無いのかと言われております。

10分なら、まだしも20分近くも列車の間隔が空いてしまえば不便です。

横須賀線の本数の少なさと列車間隔が空いてしまう時間があるせいで、横須賀線の混雑に拍車をかけているものだと思われます。

なぜ、横須賀線は混雑率に対して本数が少ないの?

横須賀線がワースト5にも入るほどの混雑率の中、列車本数が少ない理由とは、いったいなぜなのでしょうか。

それは湘南新宿ラインや、埼京線の相鉄線直通列車、横須賀線の電車が線路を共用してしまっていることが最大の原因です。

湘南新宿ラインや埼京線など、多くの路線と線路を共有している

横須賀線の電車と湘南新宿ラインの列車
横須賀線の電車と湘南新宿ラインの列車

ラッシュ時間帯では先述した通り、横須賀・鎌倉方面から品川・東京・千葉方面へと向かう横須賀線の電車が7時台に11本、

横須賀線の鎌倉/東海道線の藤沢・小田原方面から渋谷・新宿・大宮方面へと向かう湘南新宿ラインが5本、

相鉄線の海老名方面から湘南新宿ラインと同じ渋谷・新宿方面へと向かう埼京線の相鉄線直通列車が3本、

成田空港への特急「成田エクスプレス」、更にこの横須賀線の武蔵小杉駅などの駅には停車しない東海道線の通勤特急「湘南」も走っています。

これらの路線や列車と線路を共用しているため増発は難しいのが現状で、また大崎駅構内(西大井~品川間)に設置されている蛇窪信号所が平面交差している上、

この蛇窪信号所を湘南新宿ライン、埼京線の相鉄線直通列車などが使用している関係上、東京・千葉方面からの横須賀線の列車を増やすことは難しいのです。

また、この蛇窪信号所が原因で直接直通運転をしている訳ではない路線、例えば、高崎線で起きたトラブルが湘南新宿ライン、

湘南新宿ラインが経由している横須賀線、更に横須賀線と直通運転をしている総武快速線にまで遅延が広がってしまうこともよくあります。

JR横須賀線と湘南新宿ラインが分岐する蛇窪信号場
蛇窪信号場

もともと貨物線だったことも影響?

また、横須賀線が走行する線路である品鶴線自体は元々貨物線として建設されたという経緯があり、

貨物列車自体の編成が横須賀線や湘南新宿ラインなどの旅客列車よりも長いことも、列車本数に関わってきます。

東北方面から山手貨物線(埼京線の線路)経由で蛇窪信号所~新川崎駅までの間には、かつて多数の貨物列車が走っており、現在でも少数走っています。

新川崎駅の近くには貨物列車で使う機関車の車両基地である新鶴見機関区があり、新鶴見信号場と呼ばれる貨物列車の中継地点があります。

これらの貨物列車に対応するため信号の間隔が長くなり、横須賀線の本数を増やすのは不可能だと言っても良いのかもしれません。

平行路線が多いことも影響?

また最大の理由の一つとして並行路線が多いことが、増発できないのも理由の1つと言っても良いのかもしれません。

東海道線の列車、E231系K-18編成
横須賀線は東海道線と被る区間が多い(写真は東海道線列車)

横須賀線は横浜~大船間では東海道線と並行して走っています。

横須賀線は東海道線が停まらない保土ケ谷、東戸塚などに停車し、東海道線の各駅停車の役割をしています。

この区間で増発するとなると、大船や戸塚、横浜駅には東海道線や上野東京ラインの列車が停車し、品鶴線を通らず、川崎など従来の東海道線の旅客線を経由するので、所要時間も品鶴線経由で遠回りの横須賀線よりも速く、東京駅へも横須賀線は総武地下ホームと呼ばれる他の路線からも遠い地下ホームを発着していますが、東海道線や上野東京ラインの場合は、東京駅の地上ホームに乗り入れるので乗り換えが楽です。

京急線の電車、新1000形1890番台
京急線の電車

また、久里浜や横須賀、横浜からだと並行している競合路線の京急線を使い、品川駅、更に一部は都営浅草線や京成線と直通運転をしているので、新橋駅や東京駅の八重洲口にも近い宝町駅や日本橋駅へと向かうことができます。

また、横須賀線の起点駅である久里浜駅も、京急久里浜線の京急久里浜駅からも遠くは無く、京急久里浜駅からも始発電車が多数設定されていて本数もJRより多いです。

久里浜から品川の場合、普通運賃でJRの横須賀線で行くと940円なのに対し、京急線で向かう場合はそれより安く800円で行けます。

わざわざ高い運賃を払ってまでJRに乗るより、安くて早い京急を使って横須賀や横浜、東京都内へ行く人が多いのではないかと考えられます。

2010年の武蔵小杉駅横須賀線ホーム新設が混雑に悪影響?

武蔵小杉駅に入線する湘南新宿ラインの列車、E233系3000番台E-52編成
武蔵小杉駅に入線する湘南新宿ラインの列車

そして、混雑が激しくなった最大の要因としては武蔵小杉駅にあると考えられます。

それまで東京駅へはこの武蔵小杉駅から川崎駅まで南武線を使い川崎駅経由で行っても30分近くかかり、東京へ行く路線は渋谷や目黒へ向かう東急東横線、東急目黒線だけでした。

しかし東急目黒線の都営三田線直通電車、今は廃止された東急東横線の日比谷線直通電車でも、東京駅に近い大手町や日比谷へと行けましたが、所要時間は南武線川崎駅経由と変わりませんでした。

ですが、この横須賀線武蔵小杉駅が新設されたことにより、横須賀線で東京駅まで17分で向かうことができるようになり、利用者も開業前の7万人から開業後は12万人になる程、混雑率が増しました。

パンデミック前の武蔵小杉駅は利用者が10万人超えでしたが、コロナ後の2020年には8万人と利用者が減少しています。

これは、駅周辺のタワーマンションなどに在住している周辺住民や南武線、東急線などからの乗り換え客を含めた通勤客が、テレワークに移行したことが関係しているのではないかと思われます。

これと相鉄線直通列車が増発という形で新設されたことにより、横須賀線は2020年度の混雑率では117%まで減少しており、実態としてはもっと空いている可能性があります。

まとめ

ここまで解説したことを簡単にまとめます。

  • 横須賀線の概要について
  • 横須賀線の電車が少ないことの理由について

以上のことがわかったのではないかと思います。

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