今回は上野東京ラインの謎の行先である、沼津行きの設定理由や歴史などを解説します。

上野東京ラインとは?運行区間は?

上野東京ライン 東海道線 E233系3000番台 JR東日本
上野東京ラインの車両 (E233系3000番台)

上野東京ラインは、東京都内の台東区・上野駅と千代田区・東京駅間に2015年新設された線路を介して、宇都宮線・高崎線・常磐線・東海道線を相互直通運転するJR東日本の運転系統の名称になります。

上野東京ラインの列車が乗り入れる範囲は幅広く、北は栃木県の宇都宮や群馬県の前橋、南は神奈川県を超えて静岡県に入り、伊東線の伊東や、今回紹介する東海道線の沼津まで乗り入れます。
また今回は省かせていただきますが、常磐線直通の上野東京ラインも最遠で茨城県の高萩・千葉県の成田から品川まで運転されていて、上野東京ライン経由で品川駅まで乗り入れてくる特急列車に限れば、宮城県の中心街・仙台まで乗り入れる列車も存在します。

上野東京ライン 常磐線 E531系 JR東日本
常磐線系統の上野東京ライン (E531系)

沼津駅はどこにあるの?

沼津駅 駅舎 JR東海
沼津駅駅舎

一方で沼津駅はJR東海管轄の駅で、JR東日本とJR東海の境界点となる、熱海駅より3駅西にある駅です。

静岡県東部の主要都市・沼津市の代表駅で同市の市街地に位置する駅で、静岡地区の東海道線と御殿場線が通っています。

停車する列車は、普通列車はもちろんのこと、定期寝台特急「サンライズ瀬戸」及び「サンライズ出雲」、ホームライナー静岡・浜松・沼津の全てが停車します。

また、グリーン車を連結しているJR東日本・東京方面発着の列車が乗り入れる最西端の駅です。

ただ、JR東海管轄の函南~沼津間ではJR東日本のSuicaグリーン車システムは適用外のため、ホーム上にSuica専用グリーン券売機は設置されていません。

そのため、この区間で普通列車グリーン車を利用する場合には、事前に磁気グリーン券をJR全線きっぷうりばなどで購入しておく必要があります。

基本的に東京方面から熱海駅を越えて、SuicaをTOICAエリア内で利用することはできませんが、沼津駅ではSuicaエリアからの乗り越しする人が多いためか、対応する精算機があり、表向きにはSuica乗り越し利用は出来ませんが、精算可能となっています。

なお、2021年3月改正以降からはIC定期券に限り、熱海駅を越えて使用が可能となりました。

313系8000番台 セントラルライナー JR東海 沼津駅
沼津駅に停車する電車 (313系8000番台)

東京方面とJR東海管内沼津・静岡方面との直通列車の歴史

かつては東京方面と静岡方面を直通する列車が多数存在

211系 沼津行き 東海道線 JR東日本
沼津行きの列車に充当される国鉄型車両 (211系)

現在では熱海駅を跨って直通運転する列車はかなり少なくなりましたが、そんな熱海駅を跨って直通運転する普通列車は、どんな経緯があるのか、これから説明します。

時を遡ること1889年、東海道線が現在の御殿場線経由で開業した頃から「沼津行き」は存在していました。

当時の始発列車は新橋駅を6時10分に発車し、沼津駅に10時40分に到着していたようです。

もともと国鉄時代から沼津やその先の静岡駅方面へ行く東京発の東海道線は多数運行されていました。

昭和最盛期1972年以前では、昼間でも東京~大垣間の普通列車がありましたが、1972年のダイヤ改正で最西端駅が浜松となり、しばらくは大垣夜行や快速「ムーンライトながら」などを除き、浜松駅が東京発着の東海道線普通列車の最西端駅となっていました。

しかし1988年3月のJR化後初めての改正で浜松行きは廃止され、東京発着の東海道線普通列車は、この時下りは静岡まで、上りは静岡から20キロくらい先に行った島田からとなりました。

この体制は比較的長く続き、16年間続きましたが、2004年10月16日のダイヤ改正でまた大きく変化します。

2004年のJR東日本管内東海道線への新型車両導入開始で大幅削減

E231系1000番台 E231系近郊タイプ 沼津始発 東海道線 JR東日本
E231系1000番台(近郊タイプ)を使用した沼津始発東京行の東海道線列車
(前5両は熱海駅で増結)

これまで熱海をはさんで湯河原方面と函南方面の間を直通する列車が1日53本ありましたが、2004年10月のダイヤ改正により20本へと大幅に削減されました。

ちょうどこの時期から東京発着の東海道線の車両の置き換えが開始され、国鉄時代に製造された113系が、JR東日本独自の形式であるE231系1000番台(近郊タイプ)へ置き換えられ始めました。

当時の改正内容をみるに、湘南新宿ライン等東京圏での輸送強化を始めたタイミングです。

普通列車の直通区間もこれにより、JR東海が保有する373系特急形車両の1往復を除き沼津駅までに短縮されました。

しかし、その唯一の静岡駅直通の普通列車も2012年3月17日のダイヤ改正で区間廃止され、沼津駅止まりとなってしまいました。

同時にこの列車もJR東日本のE231系1000番台(近郊タイプ)などを使うようになり、東海道線東京口の普通列車グリーン車連結率100%が達成されました。

373系 静岡行き 東海道線 JR東日本 JR東海 横浜駅
横浜駅に停車中の373系使用普通列車東京発静岡行き

上野東京ライン開業時以降の変化

上野東京ライン E231系1000番台 E231系近郊タイプ 沼津行き 東海道線 JR東日本 沼津駅
沼津駅に入線するE231系1000番台(近郊タイプ)を使用した上野東京ラインの列車

その3年後、2015年3月14日の改正で上野東京ライン開業するという大きな変化があった頃、東京6時30分頃発車の沼津行きと、沼津発9時01分東京駅行きの1往復が熱海駅で系統分離され廃止、湯河原方面と函南方面の間を直通する列車が18本へ本数減となりました。

さらに2020年3月14日の改正で沼津8時29分発の小金井行きが小田原駅で系統分離され、小田原止まりとなります。

こうした変化を経てもなお、2022年現在でも朝晩を中心に1日9往復運行が残されていますが、いったいその理由は何でしょうか?

なぜ上野東京ラインから沼津駅まで直通する列車が存在する?

上野東京ライン E231系1000番台 E231系近郊タイプ 沼津行き 東海道線 JR東日本 沼津駅
E231系1000番台(近郊タイプ)の沼津行き行先表示

こういった経緯で段階的に削減されている東京発着の東海道線・上野東京ラインの沼津行き、およびJR東海管轄区間への直通列車ですが、なぜ現在でも残っているのでしょうか?

あくまで推測となりますが、今から解説する3つが理由ではないかと考えられます。

① 東海道線小田原~熱海間において車両を留置しておく場所が不足していること

1つ目、そして最大の理由は、JR東日本管内の東海道線のうち、小田原~熱海間の留置線容量が足りていないことです。

朝ラッシュ時間帯の上野東京ライン北行きの運行本数を確保するうえで、JR東日本管内だけでは車両の留置場所が足りていません。

特に熱海駅の留置線容量が足りていないことがネックであると考えられ、沼津のそこそこ広い車庫が使わせてもらえない状態となると、東京発着の東海道線、および上野東京ラインの本数を減便せざるを得なくなる可能性もあり、小田原~熱海間は確実に減便になるでしょう。

それはJR東日本にとっては痛手となるため、JR東海にお願いして留置しているものと考えられます。

② 三島・沼津方面と小田原・東京方面相互間における通勤通学需要への対応

2つ目は、三島・沼津方面と小田原・東京方面相互間への通勤通学需要へ応えるためです。

沼津~東京までの直通需要というのはほとんどないと思いますが、静岡県東部と神奈川県西部はそれなりに交流の深い地域で、朝夕を中心に現在でも流動があります。

こうした流動を表す状況証拠的なものとして、朝夕に熱海以東からの沼津行が、そのまま熱海以東の小金井・宇都宮方面へ折り返しているという事実があります。

具体的な利用者の区間は、三島~小田原間が多いと言えます。

時間帯は朝6時台~8時台と18時台~20時台で、比較的通勤通学の利用が多い時間帯に集中して運行を残している可能性があります。

③ 長野エリアに乗り入れてくるJR東海車両の車両使用料相殺

しなの 383系 JR東海
特急「しなの」 塩尻駅から北はJR東日本の区間に直通し長野駅まで乗り入れる

3つ目は、長野エリアの中央線・飯田線からのJR東海車両のJR東日本エリア乗り入れに伴う車両使用料相殺のためです。

定期列車では特急「しなの」号が中央線名古屋方面から塩尻から先、JR東日本エリアの篠ノ井線・信越本線に直通して長野へ直通しているほか、普通列車では中央線や飯田線の列車が、松本や上諏訪へ直通している事例があります。

こうしたことから恐らく、長野エリアと静岡エリアで上手いこと調整して、互いの車両使用料を相殺している可能性があります。

まとめ

ここまで解説してきたことを簡単にまとめます。

  • 上野東京ラインの概要
  • 沼津駅がどのにあるのかについて
  • 東京方面とJR東海管内沼津・静岡方面直通列車の歴史について
  • 現在でもなぜ上野東京ラインの沼津行きが残されているかについて、考えられる事柄について

以上の事柄がわかったのではないかと思います。

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