今回は東急東横線で遅延が多発している理由とはどんな理由でしょうか?

それについて解説していきます。

今回の記事はこつあず鉄道ちゃんねる様の提供で執筆しています。(内容については一部素材や内容が異なります。)

東急東横線とは?

東急東横線5050系

東急東横線とは、渋谷と横浜を結ぶ東急東横線は、文字通り東京・渋谷と横浜を結ぶ都市間連絡路線として建設され、都市間連絡だけでなく通勤通学生活路線の一面も持っています。

東急東横線は東京都渋谷区の渋谷駅と、神奈川県横浜市にある横浜駅までの24.2kmを結ぶ東急電鉄の主要路線です。

途中経路には高級住宅街の中目黒や自由が丘・田園調布などに、新興住宅街として発展している武蔵小杉や、商店街を多く抱える横浜市北部の日吉や菊名・白楽などもあります。

路線名である東横線の東横という文字は、起点となる場所の頭文字から取られていて、「東」は東京で「横」は横浜を指します。

副都心線

東急東横線は横浜駅を介して横浜高速鉄道みなとみらい線、日吉駅経由で東急新横浜線新横浜駅を介して相鉄線、渋谷駅を介して東京メトロ副都心線と相互直通運転を行います。

小竹向原駅

さらに副都心線の小竹向原駅を介して西武線、和光市駅を介して東武東上線とも相互直通運転を実施しており、計5つの路線と相互直通運転を行っているのが特徴です。

この相互直通運転によって東急東横線では、東急の車両以外にも横浜高速鉄道の車両を見かけることがあるほか、そのほかにも相鉄・東京メトロ・西武・東武の車両を見かけることがあり、また直通先各路線でも東急の車両を見ることができます。

またかつては東京メトロ日比谷線とも相互直通運転を実施しており、現在でも回送列車でごくまれに日比谷線の車両を見かけることがあります。

そんな東急東横線では2023年3月18日より、新しく開業した東急新横浜線経由で相鉄線との相互直通運転を開始しました。

ところがこのダイヤ改正後に東急東横線では、同じく相鉄線と相互直通運転をするようになった目黒線と共に、列車遅延が多発するようになってしまっています。

以前より東横線は遅延が多い路線として、ランクインする機会もそれなりにありました。

しかし相鉄線との相互直通運転開始に伴うダイヤ改正以降、東急東横線自体の遅延件数が更に増えていますが、いったいなぜでしょう?

ここ最近東急東横線での遅延が多発している?

遅延イメージ

そんな東急東横線ですが、ここ最近になって遅延が毎日のように多発しています。

以前から東急東横線自体、多数の鉄道路線と相互直通運転を行っている関係もあって、遅延もそれなりに発生はしていました。

しかし2023年3月18日に、相鉄線との相互直通運転開始に伴うダイヤ改正を実施して以降、目に見える形で遅延件数が増加しています。

2023年3月18日から5月31日までの75日間において、Twitter上で東急が東横線の運行情報をお知らせした日数は、計算が合っていれば28日となります。今ではだいぶマシになったとはいえるものの、それでも依然と比較して遅延が多くなっているのは相変わらずのようです。

遅延の原因としては東急東横線内での旅客対応、また東武東上線をはじめとした直通先他社線内における、人身事故や安全確認とたくさんあります。

しかし2023年5月11日に自由が丘駅付近で発生した、落雷が原因となる保安装置や踏切設備など信号設備の故障、また5月31日に日吉駅で発生した発煙によるポイント故障で、長時間運転を見合わせる自体になってしまうなど、重大なトラブルも発生しています。

特に日吉駅で発生したトラブルに関しては、今年3月に完成したばかりである東急新横浜線への線路で、3月26日にも発生しておりこれで二度目です。

特に5月31日の発煙は武蔵小杉〜菊名間において、6時間近くも運転を見合わせる事態にまで発展しています。

ではどうしてダイヤ改正以降、東横線では遅延が多発してしまっているのでしょうか?

なぜ東急東横線で遅延が頻繁?

東急東横線で遅延が頻繁に起きてしまう理由は幾つかありますが、乗客側の原因と東急側の両方に原因があるのではないかと考えられます。

まずは乗客側の原因について見てみましょう。

乗客側原因として挙げられる事柄は、全国的に往来需要が急回復したことが挙げられます。

2020年から世界的に流行が拡大した新型コロナウイルス感染症ですが、感染拡大当初は対策が手探りだった事もあり、世界的に非常事態宣言の発令などが行われました。

その非常事態宣言において外出禁止命令なども行う国が続出、我が国でもそれに近い実態となる外出自粛命令が発令され、人々の往来が以前と比較し急激に減少したのです。

2020年5月に非常事態宣言に伴う外出自粛命令が一旦解除され、それ以降徐々に移動需要は増えていきましたが、コロナ禍で宣言と解除が繰り返される状況下、完全に状況が回復したとは言い難い状況でした。

リモートワークイメージ

それに伴って2020年以降にオフィスワーカーを中心に、オフィスに出社するのではなく在宅で業務を行う、リモートワーク制度を導入する企業が増えました。

一時的に乗客が急減したことで2020年春の非常事態宣言中、東急では1日に数億円が消えるという危機的状況に陥り、以降もリモートワークを継続する企業が多数あり、そのリモートワークの普及によって鉄道各社は利用客が減少、その利用客はもう回復しないと予測されます。

特にIT企業が多い渋谷を拠点とする東急は厳しい現実に落とされたのです。

渋谷イメージ

しかし新型コロナウイルス感染症の対処法が確立されなどし、新型コロナウイルスとの共存を目指していく方向性が決まると、2023年ごろから海外旅行が徐々に解禁されるなど、移動需要は急激にもとに戻っていきました。

これに関連してリモートワーク制度を導入した企業でも、以前通りオフィスに出勤する形態へ切り替える事例が多数発生します。

また完全にオフィスへ出勤することを取りやめたとしても、週に何回かは出社することを義務付けた、ハイブリッドワークを導入する企業も多数発生。

それに伴って鉄道利用者も急激に回復傾向を見せており、東横線の利用者数も回復傾向にあります。

しかしそれまでリモートワークで対応していた通勤客が、久々にオフィスワーク主体となったことによって、満員電車に乗り慣れていない乗客が多発したと考えられます。

それによって乗客の乗降に手間取り、遅延発生件数が多くなってしまったというのが、一つの原因として考えられるのではと思います。

これに関しては東急も問題視しているようで、5月に入ってWebサイトにて乗客へ向けて、安定運行・遅延抑制に向けたご理解とご協力のお願いを出しています。

東急東横線遅延の混雑ではない本当の理由とは?

運転士イメージ

しかし乗客原因だけが遅延の原因ではないことは明らかで、今度は東急側における遅延多発原因を見てみましょう。

真っ先に挙げられることは東横線のワンマン化であり、それに対する乗務員訓練が足りなかったのでは、ということが挙げられると考えられます。

東急東横線では2023年3月のダイヤ改正以降、東急新横浜線を介した相鉄線との相互直通運転開始に合わせて、原則的にワンマン運転が行われています。

ワンマン運転化に至った理由としては、元々東急新横浜線自体が目黒線を延伸した形であり、ワンマン運転が行われている目黒線と取扱を合わせたことが挙げられ、このほかに経営事情の急激な悪化などから、社員数の削減を目的としていることも考えられます。

ちなみに東横線の乗り入れ先である東京メトロ副都心線では、2008年の開業当時からワンマン運転を行っています。

そのためワンマン運転に関する機器は既に備え付けており、東横線でも副都心線向けワンマン運転システムを一部共通化の上で実施していると考えられます。

しかしダイヤ改正と合わせて東横線においても目黒線に合わせてワンマン化を実施したものの、開業前までは車掌さんが乗務するツーマン乗務であり、ダイヤ改正後から基本的にワンマン運転と急に変わりました。

ダイヤ改正以前からもその準備は徐々に進んでいましたが、ワンマン訓練に伴う乗務員訓練の不足も原因と考えられます。

しかしもっと決定的な理由があり、それはワンマン運転化に伴って駅構内の放送が減少したことです。

駅構内の発車案内がなくなったことも原因か

特に駅構内のスピーカーから大音量で発車ベルなど、特に自動放送を中心とした発車案内の放送が減少しました。

代わって発車案内などの放送について、車両に備え付けられたスピーカーを使って流すケースが増加しました。

しかしこの車外スピーカーは駅のスピーカーと比較して、音量が小さいという問題があるようです。

そのため混雑する駅では雑音にかき消されてしまい、乗客が聞き取りづらくなってしまうというケースも増加したことで、発車サイン音が流れたことを乗客が知らないまま、乗客が扉の閉まるタイミングがわからないことも、理由として考えられるのではないでしょうか。

駅でのベル扱い廃止は駆け込み乗車助長を抑止する効果があるようで、実際にJR常磐線各駅停車では一定の効果があるようですが、東横線では利用者が多いうえにスピーカーの音量が小さく、かつ発車サイン音がこもって聞こえること原因で、乗客が扉の閉まるタイミングを認知できないことが指摘されています。

東急目黒線イメージ

それによって扉付近の乗客が奥に詰めるタイミングを認知できず、結果として扉にモノや乗客が挟まれて再開閉扱い、なんてことも遅延発生に繋がっているようです。

とくに夏の冷房を使用する期間中はより聞こえにくくなってしまい、さらに車外スピーカーを冷房装置カバーへ内蔵する車両の一部(東急5050系・横浜高速鉄道Y500系・東武50070系)などではそれがより顕著に指摘されているようです。

ほかに2023年3月18日から始まった相鉄線と東急線の直通運転は、中目黒・渋谷方面へ向かう東横線以外にも、目黒方面へと向かう目黒線とも相互直通運転を行っています。

直通先からも遅延を受けることも

ダイヤ改正以降、従前と同じく東横線と相互直通運転を行っている東京メトロ副都心線や東武東上線、西武池袋線、さらに横浜高速鉄道みなとみらい線だけではなく、東急新横浜線を介して目黒線やその相互直通運転先である都営三田線に、東京メトロ南北線、埼玉高速鉄道線からの遅延を拾いやすくなりました。

目黒線系統については現状新横浜以北の全線各駅でホームドアを完備しており、遅延を拾う確率はかなり低いとはいえ、これも遅延の増加に拍車をかけてしまっています。

また以前と同様、直通先での人身事故の発生も、遅延が多発する原因のひとつです。

特に東横線だけで見ると他路線から拾う遅延の大半を、東京メトロ副都心線を介して東武東上線で発生した人身事故から拾いやすくなっているのが現状です。

東武東上線での人身事故発生件数は例年日本トップクラスで、そのとばっちりで東横線が遅延することもしばしばありますが、ここ最近それがさらに増えているように感じます。

そして相鉄・東急の相互直通運転ですが、実は車両の設備面で致命的な問題があります。

相鉄と東急の相互直通運転の致命的な問題点とは?

相鉄直通

その「問題」とは相鉄線への乗り入れ可能な車両が、東横線からは東急所属の10両編成(5050系4000番台×15編成)と相鉄の車両(20000系×7編成)に限られる事です。

これは保安装置などの搭載している機器の問題であり、東横線では東急の10両編成と相鉄の電車しか相鉄線に対応した保安機器を設置しておらず、また目黒線でも相鉄線に対応した保安機器を相鉄線の車両と東急所属の車両しか備えていません。

さらに東急所属の目黒線用車両でも3020系は当初暫定的に相鉄線への直通運転ができておらず、それは一部の相鉄線用保安機器搭載工事が未実施であったが関連します。なお2023年6月以降順次不足する一部機器の搭載を実施し、試運転の後に2023年9月末より3020系の相鉄線直通運転も開始しています。

このほか東横線では副都心線用の車両も含めて8両編成が東急新横浜線に原則入線不可とされ、それは新横浜線内のホームドアシステムが関連します。

なぜ東急と相鉄の車両だけに、相鉄線への直通運転が限定されるのでしょうか?

それは関係各社の事情が関係していると考えられます。

鉄道各社の直通運転が限定される理由

ここでは東横線関連での事情のみに絞りますが、特に西武の場合は「横浜・みなとみらい方面と比べて利用数が少ないことが予測されるので、新横浜へは乗り入れない」としています。

新横浜駅イメージ

一方で東武の場合は「東海道新幹線との乗り換え需要が高い新横浜までの乗り入れを行う」としている一方、そこから先の相鉄線方面に関しては新横浜方面と横浜方面よりも西武線・東武東上線方面から通しで乗る人が比較的少ないこともあるのか、何もコメントはされていません。

東京メトロの車両も一部(17000系10両編成)で相鉄線用の機器が搭載できるようですが、基本的に相鉄と東急の間での事業であるためか、東京メトロの車両を直通させる動きはありません。目黒線側では他にも一部の都営地下鉄保有車両(2022年にデビューした8両編成の6500形)も相鉄線直通対応工事が施工しやすいような設計とされていますが、そちらも現段階では何も動きはありません。

元町・中華街イメージ

さらに相鉄の車両は元町・中華街までの運転は可能ですが、東京メトロ副都心線に入ると和光市までしか運転できず、西武線へも東武東上線へも直通ができません。

このため東武東上線と相鉄線の直通運転に関しては、15編成しかいない東急の10両編成しか直通ができません。しかも東横線から直通する東急新横浜線直通の電車は相鉄線方面行きが殆どであるため、必然的に東武東上線から来る電車は15編成しかない東急の10両編成に限られてしまいます。

これによって列車運行の柔軟性がかなり欠如しており、それも遅延の拡大に繋がっていると考えられます。

ちなみに当初は相鉄線内やJR線内の遅延も引っ張る懸念がありましたが、実際には東横線やJR線からもらった遅延を相鉄が吸収していることが多いようです。

まとめ

  • 情勢回復と乗客の乗り方に関する不慣れ、ワンマン化に関連する設備や乗務員訓練の問題、相鉄線直通に関連した車両設備などが主に考えられること
  • 特に乗客のオフィス回帰に伴う動きと、満員電車に乗り慣れていないことが関連すると考えられ、またワンマン化に関連して主体的に使用し始めた、車外スピーカーの音が聞き取れないことも関連すると考えられること
  • それに相鉄線直通に関する車両の制約も、原因として考えられること
  • このほか落雷に関連する自由が丘駅での事例や、複数回あった日吉駅での線路トラブルなど、設備関係による大きな原因も最近複数回あったこと

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