通過駅がわずかしか存在しない快速列車である、東海道線の快速アクティーが、2023年のダイヤ改正で廃止となる予定です。
一体なぜ、廃止になるのでしょうか?
快速「アクティー」とは?
東海道線で走る快速「アクティー」は、東海道線の東京駅を通る快速列車のことを指します。
現在は東京駅を毎日19時48分と20時48分に出発する、東京発小田原行きの2本のみが運転されています。
快速アクティーの通過駅はたった4駅のみ
快速「アクティー」の停車駅は、東京・新橋・品川・川崎・横浜・戸塚・大船・藤沢・茅ヶ崎・平塚・国府津と小田原と、小田原から先の各駅です。
つまり通過駅は辻堂、大磯、二宮、鴨宮の4駅のみで、通過駅を数えた方が早いという状態でした。
そのほか東海道線の横浜~小田原間では2004年10月改正以降、湘南新宿ラインの特別快速も毎時1本設定されており、大船~小田原間は快速アクティーと同じ停車駅です。
東海道線では快速アクティーと合わせて、日中時間帯は30分ごとに快速列車のサービスが提供されていたことになります。
これは湘南新宿ライン本数大幅増加に合わせて増えた列車本数を、横須賀線・宇都宮線・高崎線では既存の列車を減便して調整したのに対し、東海道線では既存の東京駅発着の列車はそのまま、湘南新宿ラインの列車も一部時間帯では増発として受け入れたための措置です。
この時に宇都宮線の快速「ラビット」や、高崎線の快速「アーバン」は日中時間帯で運転されなくなっています。
最後に残った快速アクティーは通勤快速の名残
ただし現在に設定されている快速「アクティー」は、平日のみ2021年3月のダイヤ改正まで、通勤快速として設定されていた列車の一部です。
東海道線の通勤快速は遠近分離を果たす目的で、品川~大船間をノンストップで走ることが特徴でした。
なお2021年3月ダイヤ改正以降、日中時間帯の快速「アクティー」は、主に普通列車に格下げされて、夜間の2本のみとなっています。
残った東京駅19時48分発と20時48分発の快速「アクティー」も、2023年3月のダイヤ改正で決定しており、これで快速「アクティー」は消滅となります。
なぜ快速アクティーの通過駅は少なかった?歴史とともに考える
快速「アクティー」の歴史は意外と新しく、運転が開始されたのは国鉄が消滅した後の1989年3月ダイヤ改正です。
国鉄時代にも東京近郊区間の東海道線にて、快速の設定が無かったわけでもありませんが、とはいえ1981年のことで週末を中心とした臨時列車扱いでした。
東海道線自体駅間距離が比較的長いこと、そして東京~大船間では並走する京浜東北線や横須賀線の快速的役割を東海道線が担っていることもあり、以前から東海道線で快速列車を運転するニーズに関してはあまりなかったのではないのでしょうか。
それでも国鉄が消滅した後東海道線では、快速「アクティー」として定期列車で快速列車の設定が行われています。
実は特急踊り子が通過となった救済措置の列車だった
快速アクティー設定の理由は、1989年3月のダイヤ改正にて特急「踊り子」が速達化のため、藤沢・茅ヶ崎・平塚・真鶴を通過するようになったことです。
この4駅は平日の一部列車が通勤需要に応える形で停車しており、これら通過駅に対する救済処置が必要になったため、というのが快速「アクティー」の設定理由になります。
設定当初の快速「アクティー」の停車駅は現在よりも少なく、東京、新橋、品川、川崎、横浜、大船、藤沢、茅ヶ崎、平塚、国府津、小田原、真鶴、湯河原、熱海でした。
通過駅は戸塚、辻堂、大磯、二宮、鴨宮、早川、根府川と、なんと7駅もあったのです。
当初は平日朝ラッシュ時間帯終了以降、日中~夜間帯にかけて概ね1時間に1本程度のペースで設定されましたが、1990年3月ダイヤ改正からは当時の利用実態に合わせる形で、平日19時50分以降の快速「アクティー」が全て通勤快速に変更・再編されています。
2階建て車両の快速「アクティー」を導入するも失敗
更に1992年4月からは一部の快速「アクティー」では、二階建て車両である215系が充当されるようになり、二階建て車両が快速「アクティー」の代名詞的存在にまでなりました。
しかし215系は5両付属編成の製造計画こそあれど、結局10両編成わずか4本しか製造されませんでした。
確かに座席数は大幅に増え、二階席からの眺望性は良好で好評でしたが、これゆえ一般の東海道線普通列車で使われる車両より輸送力は小さく、さらに扉は幅の狭い扉が2つのみと、二階建て車両ゆえに階段も設置されていることと相まって、乗降性も悪く遅延が多発してしまいました。
結局この215系も邪魔者でしかなく、2001年11月末で快速「アクティー」から撤退しています。
増加する快速アクティーの停車駅
また、快速「アクティー」自体の停車駅も年々増加傾向にありました。
1998年3月のダイヤ改正で一部の快速「アクティー」が早川駅と根府川駅に停車することから始まり、2004年10月のダイヤ改正では、すべての快速「アクティー」が早川駅と根府川駅に停車するようになりました。
これは小田原~熱海間の利用者数が比較的少なく、列車本数が少ない区間における合理化と乗車チャンス確保が理由と考えられます。
さらに2007年3月ダイヤ改正からは、戸塚駅にも快速「アクティー」全列車が停車となっています。
戸塚駅停車駅で速達性が失われる 誤乗も?
戸塚駅に停車するようになった理由についてですが、湘南新宿ラインの特別快速が当初から戸塚駅にも停車していたことによる誤乗防止の観点と、戸塚駅で湘南新宿ラインと同じホームで乗り換えができることによる、利便性向上の2つの理由があります。
しかしこの停車駅増加は結果的に通過駅をたった4駅にしてしまい、最終的に通過駅は藤沢~小田原間のたった4駅のみ、辻堂・大磯・二宮・鴨宮となってしまいました。
また戸塚駅に快速「アクティー」が停車するようになってからは、東海道線の快速「アクティー」と湘南新宿ラインの快速を誤乗するケースもあったようです。
湘南新宿ラインの快速は東海道線内各駅停車であり、横須賀線内でのみ通過運転を行っていたため紛らわしくても致し方ないでしょう。
減便されてきた快速アクティー
快速アクティーはその後、平塚での普通列車との接続を湘南新宿ラインの列車に変更するなど、ダイヤ改正で若干のテコ入れも見られました。
しかし完全なパターンダイヤでもないことからそれも徹底されず、中途半端な状態が否めないまま推移しました。
その後上野東京ラインの開業により2015年3月のダイヤ改正からは、日中時間帯を中心に多くの快速「アクティー」が宇都宮線と直通運転するようになりました。
ただし宇都宮線内はすべて普通列車としての運転であり、速達性の向上などといった利用者目線での大きな変化は特段ありませんでした。
それもそのまま現状維持が続きましたが、2021年3月のダイヤ改正で大幅にメスが入ります。
このダイヤ改正ですべての上り快速「アクティー」と、日中時間帯の下り快速「アクティー」が普通列車に変更されるか廃止されました。
また土休日の東京駅を21時49分とかに発車する、快速「アクティー」も廃止されることになり、これはそれまで22時0分に東京駅を発車していた、寝台特急「サンライズ瀬戸」「サンライズ出雲」を、21時50分に東京駅から発車させるための措置です。
同時に平日の東京駅19時50分発と20時50分発の通勤快速が、快速「アクティー」になった結果、快速「アクティー」は東京駅19時48分発と20時48分発の2本のみ、東京発小田原行きで運転されるだけになりました。
そしてその2本も2023年3月ダイヤ改正でメスが加えられます。
東京駅19時48分発の快速「アクティー」は上野駅発の普通列車に、20時48分発の快速「アクティー」は廃止されることになりました。
これによって2023年3月のダイヤ改正で、快速「アクティー」全て運行終了となり、約34年間にわたる歴史に幕を閉じるのです。
まとめ
・ 現在は毎日19時48分と20時48分に東京駅を出発する、小田原行きの2本のみが運転されていることについて
・ もともとは踊り子が藤沢、茅ヶ崎、平塚、真鶴を通過することによる、救済措置の意味を込めて設定された列車であること
・ 一時期は二階建て電車が使われシンボルともなっていたが、遅延原因にもなり使われなくなったことについて
・ 当初通過駅は7駅あったが、どんどん停車駅が追加され最終的には4駅しか通過駅がなかったこと
・ 2021年3月以降メスが入り、2023年3月で快速アクティーは完全に廃止になること