今回は湘南新宿ラインの東海道線側の終着駅が、なぜ熱海駅ではなく小田原駅なのかについて解説します。
湘南新宿ラインとは?運行区間は?
湘南新宿ラインは、東京を中心に北は栃木県や群馬県、南は神奈川県までを結ぶ鉄道の大動脈の一つです。
東京の池袋・新宿・渋谷など、山手線の西側、東京の三大副都心と呼ばれる場所を経由し、宇都宮線と横須賀線、および高崎線と東海道線を走るルートのことを湘南新宿ラインと呼びます。
運行開始は2001年12月1日のダイヤ改正からで、20年ほど前に新設された路線の系統です。
当初は日中を中心に1日25往復の設定でしたが、以降徐々に増発し、2004年10月16日のダイヤ改正から64往復へと大増発をし、以降も増発が繰り返されています。
なお似たような運行系統としては、上野東京ラインがあります。
こちらは都心部において山手線の東側である品川・新橋・東京・上野などを経由する点や、横須賀線への直通列車がなく、神奈川県側に直通する列車はすべて東海道線へ直通する点、すべて品川で折り返しますが常磐線との直通列車がある点などにおいて差があります。
しかし湘南新宿ラインと上野東京ライン、どちらも東京を中心に南北をつなぐ路線系統であるのには変わりありません。
湘南新宿ラインの停車駅 (高崎線・東海道線系統)
停車駅名 | よみかた | 快速 | 特別快速 | 接続路線 |
高崎 | たかさき | 〇 | 〇 | 上越新幹線 北陸新幹線 上越線 両毛線 (一部湘南新宿ラインは前橋まで直通) 吾妻線 信越線 |
倉賀野 | くらがの | 〇 | 〇 | 八高線 |
新町 | しんまち | 〇 | 〇 | |
神保原 | じんぼはら | 〇 | 〇 | |
本庄 | ほんじょう | 〇 | 〇 | |
岡部 | おかべ | 〇 | 〇 | |
深谷 | ふかや | 〇 | 〇 | |
籠原 | かごはら | 〇 | 〇 | |
熊谷 | くまがや | 〇 | 〇 | 上越新幹線 北陸新幹線 秩父鉄道線 |
行田 | ぎょうだ | 〇 | レ | |
吹上 | ふきあげ | 〇 | レ | |
北鴻巣 | きたこうのす | 〇 | レ | |
鴻巣 | こうのす | 〇 | 〇 | |
北本 | きたもと | 〇 | 〇 | |
桶川 | おけがわ | 〇 | 〇 | |
北上尾 | きたあげお | 〇 | レ | |
上尾 | あげお | 〇 | 〇 | |
宮原 | みやはら | 〇 | レ | |
大宮 | おおみや | 〇 | 〇 | 新幹線(東北・上越・北陸・北海道・山形・秋田) 京浜東北線 宇都宮線 上野東京ライン 埼京線・川越線 東武野田線(東武アーバンパークライン) ニューシャトル |
さいたま新都心 | さいたましんとしん | レ | レ | ホームなし |
浦和 | うらわ | 〇 | 〇 | 京浜東北線 宇都宮線・高崎線(上野東京ライン) |
赤羽 | あかばね | 〇 | 〇 | 京浜東北線 宇都宮線・高崎線(上野東京ライン) 埼京線 |
池袋 | いけぶくろ | 〇 | 〇 | 埼京線 山手線 東武東上線 西武池袋線 東京メトロ丸ノ内線 東京メトロ有楽町線 東京メトロ副都心線 |
新宿 | しんじゅく | 〇 | 〇 | 中央線快速電車 中央・総武線各駅停車 山手線 埼京線 京王線 小田急線 東京メトロ丸ノ内線 都営新宿線 都営大江戸線(新宿駅・新宿西口駅) 西武新宿線(西武新宿駅:近接駅) |
渋谷 | しぶや | 〇 | 〇 | 山手線 埼京線 東急東横線 東急田園都市線 京王井の頭線 東京メトロ銀座線 東京メトロ半蔵門線 東京メトロ副都心線 |
恵比寿 | えびす | 〇 | レ | 山手線 埼京線 東京メトロ日比谷線 |
大崎 | おおさき | 〇 | 〇 | 山手線 埼京線 りんかい線 |
西大井 | にしおおい | レ | レ | 横須賀線 ※原則高崎線・東海道線系統は通過、まれに臨時停車あり |
武蔵小杉 | むさしこすぎ | 〇 | 〇 | 横須賀線 南武線 埼京線(相鉄線直通列車) 東急東横線 東急目黒線 |
新川崎 | しんかわさき | レ | レ | 横須賀線 ※原則高崎線・東海道線系統は通過、まれに臨時停車あり |
横浜 | よこはま | 〇 | 〇 | 上野東京ライン・東海道線 京浜東北線・横浜線・根岸線 京急線 東急東横線・みなとみらい線 相鉄線 横浜市営地下鉄ブルーライン |
保土ヶ谷 | ほどがや | レ | レ | 横須賀線 ※原則高崎線・東海道線系統は通過、まれに臨時停車あり |
東戸塚 | ひがしとつか | レ | レ | 横須賀線 ※原則高崎線・東海道線系統は通過、まれに臨時停車あり |
戸塚 | とつか | 〇 | 〇 | 横須賀線 横浜市営地下鉄ブルーライン |
大船 | おおふな | 〇 | 〇 | 横須賀線 根岸線 湘南モノレール |
藤沢 | ふじさわ | 〇 | 〇 | 小田急江ノ島線 江ノ電 |
辻堂 | つじどう | 〇 | レ | |
茅ヶ崎 | ちがさき | 〇 | 〇 | 相模線 |
平塚 | ひらつか | 〇 | 〇 | |
大磯 | おおいそ | 〇 | レ | |
二宮 | にのみや | 〇 | レ | |
国府津 | こうづ | 〇 | 〇 | 御殿場線 |
鴨宮 | かものみや | 〇 | レ | |
小田原 | おだわら | 〇 | 〇 | 東海道新幹線 小田急線 箱根登山鉄道線 伊豆箱根鉄道大雄山線 |
湘南新宿ラインの東海道線側の終着駅が小田原な理由は?
湘南新宿ラインの運行ルートについて、一つの疑問が浮かび上がってきます。
それは、高崎線・東海道線系統の南側の終着駅がなぜ小田原なのかということです。
JR東日本管内の東海道線の終点は、神奈川県を飛び越え、静岡県に位置する熱海駅です。
熱海と小田原の間には真鶴や湯河原などの4駅があり、その距離は20.7キロメートル。
熱海といえば、温泉保養地などで知られた観光地です。
湘南新宿ラインは東海道線を使っているのだから、せっかくなら熱海を終着駅にすれば良いのにと思う方もいると思います。
ではなぜ、熱海まで湘南新宿ラインは直通しないのでしょうか。
公式には発表されていないため、推測でしかありませんが、理由についてざっと3つほど考えてみましたので、それぞれ深掘りしていきます。
競合路線の関係
まず1つ目が、競合路線の関係です。
湘南新宿ラインは、新宿~藤沢・小田原間で小田急線と、池袋~横浜間で東急東横線・東京メトロ副都心線と競合しています。
そのため、ライバルも多いけれど乗降客数も多い大船〜小田原間は、ルートとしてはずせないと考えられたのではないかと思われます。
一方、小田原〜熱海間はJR東日本とJR東海の2社があり、そこで競合しているかもしれないとはいえ、JRの独壇場。
小田原と熱海を結ぶ東海道線の普通列車も運行されていますし、熱海は東海道新幹線こだま号の停車駅でもあります。
同じく停車駅である小田原からこだま号に乗れば、7分で熱海まで行けるのです。
あえて湘南新宿ラインを運行させて、普通列車や新幹線のライバルを増やす理由はないのでしょう。
車両のやりくりの問題
2つ目に考えられる理由は、車両のやりくりが関係しているかもしれないということです。
湘南新宿ラインは本数が多いので、大量の車両をやりくりしなければなりません。
しかも、運行距離が長ければそれだけやりくりは複雑になります。
参考までに小田原〜熱海間を運行されている東海道線の普通列車は、この区間を走るのに24分かかっています。
1本あたりはたいしたことがなくても、すべての列車の稼働時間が伸びたら…
そう考えると、少しでも運行区間を短くして、車両のやりくりを効率化した方がよさそうです。
小田原~熱海間の鉄道需要が少ないこと
最後に紹介する理由は、そもそも小田原~熱海間の鉄道需要が少ないためということです。
そのために湘南新宿ラインは小田原を終点としていて、熱海までいかないのではないかというものです。
小田原〜熱海間は、東海道線の普通列車が運行しています。
途中駅の根府川や湯河原などの利用客数がそこまで多くないので、1日に数十往復もしている湘南新宿ラインも小田原から熱海の間を走るとなると、無駄が多いのかもしれません。
JR東日本も営利企業なので、できるだけ効率的なダイヤを組みたいと考えているはずです。
最近の過去何度かのダイヤ改正で、小田原~熱海間の列車が削減傾向にあるのは、こういったところに繋がるのではないかと思います。
過去には熱海行きの湘南新宿ラインがあった?
ここまで、なぜ湘南新宿ラインが熱海まで行かないのかという理由について、推測・考察してきました。
今でこそ、高崎線・東海道線系統の湘南新宿ラインは小田原止まりですが、実はかつては熱海発着の湘南新宿ラインが存在した時期もあったのです。
かつて、土日祝日や夏や冬の長期休暇の時期を中心に、小田原発着の湘南新宿ライン特別快速のごく一部が、熱海まで延長運転していたのです。
熱海駅周辺は観光地ということもあり、行楽客を取り込もうとしたのだと考えられます。
この臨時の延長運転は、2007年ごろから断続的に行われていましたが、2012年3月ダイヤ改正から設定が消滅しています。
小田原〜熱海間を走る快速といえば、快速「アクティー」を思い浮かべた人もいるのではないでしょうか。
快速「アクティー」は当初、東京~熱海間を結んでいた快速列車です。
1989年3月に登場した当初、小田原〜熱海間は途中、真鶴と湯河原にしか停車しませんでしたが、
その後1998年3月から一部列車が、2004年3月からは全列車が各駅に停車しています。
この快速アクティーと比較すると、かつて小田原〜熱海間で運行されていた湘南新宿ラインの停車駅は少なかったようです。
早川、根府川は通過して、かつての快速「アクティー」と同じく、真鶴、湯河原、熱海のみに停車していました。
結局、臨時延長運転も消えてしまったことを考えると、小田原〜熱海間の利用客は想定よりも少なかったのかもしれません。
小田原~熱海間を走っていたころの湘南新宿ライン特別快速の停車駅
小田原~熱海間のみ抜粋して紹介します。
駅名 | よみかた | 特別快速 (湘南新宿ライン) | 東海道線列車 (参考) | 接続路線 |
小田原 | おだわら | 〇 | 〇 | 東海道新幹線 小田急線 箱根登山鉄道線 伊豆箱根鉄道大雄山線 |
早川 | はやかわ | レ | 〇 | |
根府川 | ねぶかわ | レ | 〇 | |
真鶴 | まなづる | 〇 | 〇 | |
湯河原 | ゆがわら | 〇 | 〇 | |
熱海 | あたみ | 〇 | 〇 | 東海道新幹線 伊東線 東海道線(JR東海区間 三島・沼津方面) |
まとめ
ここまで解説したことを簡単にまとめます。
- 湘南新宿ラインの概要と高崎線・東海道線系統の停車駅
- 湘南新宿ラインの東海道線側の終着駅が小田原な理由の考察
- 過去に熱海行きの湘南新宿ラインが臨時延長運転で走っていたこと
以上のことがわかったのではないかと思います。