2020年4月から主にお台場方面を走るバス高速輸送システム(BRT)である「東京BRT」。

そんな東京BRTとは何でしょうか?実際の乗車記と合わせて説明します。

東京BRTとは?

東京BRTは東京都心部にありながら鉄道空白地帯にもあたる、勝どき・晴海地区の交通機能強化を主な目的として運行が開始された路線です。

東京2020オリンピックにおける選手村の整備と選手村地区の再開発(HARUMI FLAGの整備)、築地市場の移転・豊洲市場の開場、環状2号線の整備などと一体化された、勝どき・晴海地区の再開発の一環で運行がスタートしたものです。

基本的には新橋と勝どき地区・晴海地区を結ぶ路線となっており、一部は虎ノ門ヒルズや国際展示場(東京ビッグサイト)まで乗り入れています。

現在は二次プレ運行という段階であり、2024年4月1日に「HARUMI FLAG」がまちびらきする少し前の2024年2月1日より、本格運行に移行することになります。

運賃は均一運賃で大人220円/小児110円となっています。バスの運行は京成バス100%子会社である、東京BRT株式会社が担っています。(一部京成バス本体運行便もあり)

停車停留所一覧

●:停車 〇:停車(快速は通過) ▼:土休日のみ □:本数少なめ |:経由しない レ:通過

番号停留所名幹線ルート晴海・豊洲ルート
勝どきルート
選手村ルート直通特急(臨時のみ)乗換・補足
B11虎ノ門ヒルズ東京メトロ日比谷線(虎ノ門ヒルズ駅)
東京メトロ銀座線(虎ノ門駅)
B01新橋(新橋駅)
JR山手線
JR京浜東北線
JR上野東京ライン/東海道線・宇都宮線・高崎線・常磐線
JR横須賀線・総武快速線
東京メトロ銀座線
都営浅草線
ゆりかもめ

都営大江戸線(汐留駅)
B02勝どきBRT||停車しない便は勝どき陸橋を経由
B31はるみらい|
B32晴海ふ頭公園|
B33HARUMI FLAG
(晴海五丁目ターミナル)
|
B21晴海中央||
B22晴海BRTバスターミナル||
B23豊洲||東京メトロ有楽町線(豊洲駅)
ゆりかもめ(豊洲駅)
B03豊洲市場前ゆりかもめ(市場前駅)
B04有明テニスの森ゆりかもめ(有明テニスの森駅)
B05国際展示場りんかい線(国際展示場駅)
ゆりかもめ(有明駅)
B06東京テレポートりんかい線(東京テレポート駅)

※HARUMI FLAGと豊洲市場前・国際展示場を結ぶ便はHARUMI FLAG~晴海ふ頭公園~はるみらい~豊洲市場前~有明テニスの森~国際展示場というルートになります。HARUMI FLAG経由で新橋と豊洲市場前/国際展示場を結ぶ便は存在しません。

東京BRTの使用車両

東京BRTでは白を基調としたレインボーカラーをまとったバスが使用されています。

バス停も白を基調としたレインボーカラーとなっており、一目で東京BRTだとわかるかと思います。

新橋停留場

トヨタの水素燃料電池バスが主力

そんな東京BRTでは10.5m級の車体を持つ単車型水素燃料電池バス(トヨタSORA/ZBC-MUM1NAE)が、主力として使用されています。

主力車種である燃料電池バスのトヨタSORA ZBC-MUM1NAE

燃料電池バスであるトヨタSORAは2020年の一次プレ運行時に5台(社番1001号車~1005号車→R001号車~R005号車)が導入され、2023年の二次プレ運行時に合わせてさらに3台(社番R010号車~R012号車)が追加されています。ただし追加導入分は5台入っているものの、残りの2台(1013号車、1014号車)はいまのところ白いままとなっており基本的に東京BRTの運行に入っていません。(コミケ臨時便などでの運用履歴があります。) 2023年に入って晴海フラッグまちびらきに関する本格運行を前に、3台程度の増車(R015号車以降)が入った模様です。

当初2024年の本格運行時までに単車型車両は全て燃料電池バスとする計画だったそうですが、現在の状況を見る限りしばらくは一般のディーゼルエンジンを使用するバスも引き続き使われると考えられます。

いすゞ製のディーゼル車には目玉となる連節バスも

東京BRTではトヨタSORA以外にも、ディーゼルエンジンを主な動力源とするいすゞのバスが4台5台使用されています。

うち3台は一般的な11m級の単車型長尺路線バス(いすゞエルガ/2PG-LV290Q3 社番1006号車~1008号車→R006号車~R008号車)ですが、もう2台のうち1台は18m級のハイブリッド連節バス(いすゞエルガデュオ/LX525Z1 社番1009)です。

いすゞ製のバスも先述したトヨタSORAと同じく、白い車体にレインボーカラーをまとっており、一目で東京BRTだとわかるデザインになっています。

目玉車種である18m級連節バス(1009号車/いすゞエルガデュオLX525Z1)

このうち目玉車種であろうエルガデュオの1009号車は東京23区内で初めて導入された連節バスであると同時に、エルガデュオとしてはじめていすゞから顧客へ納入された車両でもあります。

ちなみにエルガデュオ自体もいまのところこの東京BRTと三重県(三重交通神都ライナー)のみの納入に留まっているようです。

ただし構造や見た目がほぼ同じ姉妹車である日野ブルーリボンハイブリッド連節バスは既に首都圏近郊でも横浜や川崎など多数の地域で走っており、こちらは東京BRTの親会社である京成バスでも2台導入し千葉県幕張新都心地区で使用しています。

日野ブルーリボンハイブリッド連節バス(KX525Z1/京成バス新都心営業所4001号車)
見た目は東京BRTでも使われるエルガデュオとほぼ同じだがこちらはいすゞではなく日野

いまのところ1009号車の1台のみである東京BRTの連節バスは、原則として新橋~国際展示場・東京テレポート間の幹線ルートにおいて固定ダイヤでの運行となっています。(平日朝1往復のみ虎ノ門ヒルズまで乗り入れます。)

連節バスが使用される便は時刻表に四角く囲まれており、時刻表を見ればすぐに判別が可能です。ただし1台しかないことから整備や故障・修理などで使えない日はもちろん連節バスは使用不可能で、連節バスを使用するダイヤでも日によって単車で運行する場合があります。

そしてもう1台は親会社である京成バスから転籍してきたエルガハイブリッドのR173号車(QQG-LV234L3)です。元江戸川営業所E172号車で、しばらく京成バスのカラーリングほぼそのままをまとった172号車として訓練用途のみで用いられていましたが、2023年下期にBRT車両のカラーリングへ装いを変えて現在は営業運行でも使用されています。

東京BRTって実際どうなの?乗車してみた感想

そんな東京BRTですが、実際のところ利便性や利用者の定着状況はどうなのでしょうか?

筆者が実際に乗車して体感した事柄をベースに記述します。

幹線ルートに国際展示場から乗車

国際展示場駅前のバスロータリーに進入する東京BRT 1009号車

仕事の都合で近隣に所要があり、その帰りのルートとしてりんかい線やゆりかもめも選択肢にある中、ふと東京BRTがここまで乗り入れてくるようになったことを思い出し、東京BRTを使ってJR線と接続する新橋まで乗車することにしました。

発車時刻付近に道端を歩いているとやってきた国際展示場行きの東京BRTは、ちょうど連節バスを使用するダイヤでした。

この折り返し便の新橋行きに乗車することになるため、今回はご覧に入れている連節バス(エルガデュオ1009号車)に乗車することになりました。

東京BRTで使われる連節バス(エルガデュオ1009号車)の車内

車内は木目調の床と黒に近い紺色の座席が特徴です。

今回乗車した連節バスのエルガデュオを含め、単車車両も概ね似た雰囲気の車内です。

土の車両も基本的には他の事業者でもみられる標準タイプの車内ですが、床と座席の色が異なることで高級感を演出し、東京BRTが特別な存在であるという雰囲気を出しています。

乗務員さんも丁寧な方のように見受けられ、乗車した段階で良い雰囲気を感じました。

リーズナブルな運賃で素早く新橋まで行ける!

乗車して感じたことは「もう新橋着いたの!?」ということです。

それもそのはず、2023年4月から始まった二次プレ運行開始時から、新橋~勝どきBRT間の経路が前年12月から供用を開始した築地虎ノ門トンネル経由となり、運行区間がショートカットされ所要時間が短縮されているのです。

そしてこの4月から始まった二次プレ運行開始時に設定された路線の目玉と言える路線が、今回乗車した新橋~国際展示場・東京テレポート間を結ぶ「幹線ルート」です。

幹線ルートは日中の標準で国際展示場→新橋間を15分程度で結び、今回乗車した夜間帯の時間は14分が所要時間とされていました。

実際に15分程度で新橋まで到着したため、「え?もう着いたの?」という感覚になったのです。

また運賃も周辺の路線バスとほぼ同額である、220円(大人)となっています。

周辺を走る路線はりんかい線やゆりかもめなど、比較的運賃が高めの路線が多いことから、所要時間の短さも相まって東京BRTの存在は非常に有難いものだと感じました。

表にまとめると以下になります。

乗車場所は東京BRTとりんかい線が「国際展示場」、ゆりかもめが「有明」「東京ビッグサイト」のどちらか、都バスが「東京ビッグサイト」になります。

使用交通機関東京BRTゆりかもめりんかい線ゆりかもめりんかい線都バス
降車場所新橋新橋大井町
大崎
豊洲新木場東京駅
運賃(大人,IC)220円388円335円251円272円210円
所要時間15分前後25分前後大井町:11分前後
大崎:15分前後
10分前後5分前後各停便:35分~40分前後
急行便:25分~30分前後

※直通特急の場合は13分程度で国際展示場~新橋間を結びます

利用率も比較的好調?失敗とは言えない

そんな東京BRTですが、今回筆者が乗車した日にちは週末の金曜日、時間帯は比較的夜遅めの21時台のことです。

さらに国際展示場→新橋のルートは逆方向ということで、時間帯を含めてそれほど利用者が見込めないルートです。

しかし、それでも筆者が乗車した便は最終的に10名ほどのお客さんを載せていました。(筆者含む)

時間帯・方向を考えるとこの数値はかなり良い数値ではないかと思います。

新橋の発車前待機列にはざっと30人くらい見受けられた

そして逆方向は21時台であるにも関わらず、なんと30名ほどの待機列が既にできていました。

30名程度というと連節バスの収容力(エルガデュオの乗客定員は118名)には及ばないかもしれませんが、時間帯やプレ運行という状況を考えたら十分と言えるのではないでしょうか。

勝どきなど走行地域の住民にとって、東京BRTは既に根付いていると言えると思います。

また2023年8月に開催されたC102からは、東京BRTもコミックマーケット開催時の大量輸送手段に加わることになり、帰りの便を中心として多くの利用者に使用された声が確認できます。

12月のC103開催時からはコミケ客輸送のための直通特急も新設され、東京BRTは既に多くの人に認知・利用されていると言えるでしょう。

【問題点】バスの宿命・定時性がやはり課題?

東京BRTの課題としては定時運行性があり、一次プレ運行開始時はそれを指摘する声が多々あったように思えます。

だがそれも二次プレ運行開始時にルート変更があったことなどで若干減ったようです。

しかし本来のBRT(バス・ラピッド・トランジット)という用語は、バス専用道路/車線や公共車両優先システム(PTPS)の導入などで、速達性・定時性ともに上げているバスのことを指す用語ですが、日本でBRTというとほかの一般路線バスとちょっと差別化された程度(連節バスの導入、快速運転の実施など)で済まされているケースも多く、「なんちゃってBRT」などと言われてしまうケースも多々あります。

「なんちゃってBRT」と呼ばれてしまうような形態で終わってしまうBRTも実際に多い
写真の萬代橋ラインも専用道路の導入を試みるが、現状実現していない
(路線集約などによる定時性向上などの施策はある)

現状の東京BRTも「なんちゃってBRT」の範疇に含まれてしまうと考える人も多いと考えられ、より多くの人に快適に利用してもらうためにも、主にバスに合わせて信号制御などを行う公共車両優先システム(PTPS)の導入が待たれるでしょう。

まだプレ運行という段階の東京BRTですが、今後もたくさんの方に利用されることを期待しています。

まとめ

ここまでいかがでしたでしょうか?

  • 東京BRTの概要
  • 東京BRTの車両について
  • 東京BRTに実際乗ってみた感想について
  • 東京BRTの課題について

お分かりいただけたのではないでしょうか?良ければ記事を共有していただけると嬉しいです。

おすすめの記事