JR東日本は11月24日、同社管内の赤字が発生している一部路線について、収益や輸送人員などのデータを公表しました。
JR東日本は「持続可能な交通体系について建設的な議論をさせて頂くため」としています。
今後廃止やバス転換、上下分離なども検討か
JR東日本は今回「持続可能な交通体系について建設的な議論」としていますが、具体的にはどういったことなのでしょうか?
JR東日本は今回の発表では「路線を廃止する」という直接的な表現を使っていないものの過去の事例から考えられることは次の通りです。(JR北海道平成28年発表資料より抜粋などを参考)
- 駅のホームの設備などの削減
- 利用の少ない駅の廃止、列車本数の減便
- 運賃値上げ
- 沿線の人が鉄道を利用するような利用促進策
- 運行をJRが行い、施設などの維持を自治体などが行う上下分離方式
- 鉄道路線を廃止し、バスに転換する(夕張線などの事例)
ただし、この発表が出てから、今すぐに路線の廃止などが行われる可能性は少ないでしょう。ただし、数十年のスパンで路線廃止やバス転換や上下分離が行われる可能性があります。
JR東日本赤字路線11選
今回赤字路線リストに乗った路線について10個ピックアップしていきます。
路線について紹介していきながら解説していきます。
地域が近い路線については1つの項目で説明しています。
赤字路線①吾妻線 長野原草津口~大前 13.3km
吾妻線は群馬県にある路線で、途中の長野原草津口駅は有名な温泉地である「草津温泉」のJR最寄り駅です。
本来吾妻線は長野県の豊野まで延伸する計画の路線でした。様々な理由から大前から先は未だ「未成線」となっており、今後延伸する予定も今のところありません。
かつては大前駅の一つ手前の駅、万座・鹿沢口から鹿沢温泉や草津温泉へのバス路線も存在しましたが、現在は軽井沢、万座温泉、草津温泉、上田駅までのバス路線のみの運行となっています。
もし廃止になれば、バス路線の処遇についても注視したいところです。
大前駅に行ってきましたので、こちらも合わせてご覧ください。
赤字路線②左沢(あてらざわ)線 寒河江~左沢
左に沢と書いてあてらざわと読ませる路線が山形にあります。
この路線は山形駅から分岐する形ですが、寒河江駅までは恐らくそこそこ輸送人員がいるため、そこは廃止したくないということかもしれません。
左沢から先には鉄道路線では進めないためいわゆる「盲腸線」となっています。
赤字路線とはいえ、通勤通学時間帯はそこそこ本数があるため、廃止されるまでの猶予はありそうです。
赤字路線③飯山線 豊野~越後川口
長野駅から戸狩野沢温泉へのアクセスができる飯山線ですが、こちらも赤字路線に選ばれてしまいました。
豊野~越後川口まで長野県から新潟県に抜けるルートとなっていますが、高速道路が並行して整備されていないものの、並行する国道117号線が一部バイパス区間となっており、所要時間が不利になっている区間があるかもしれません。
JR東日本としても、路線を改良したとしても利用客の増加は見込めず、約100kmの区間の維持費も馬鹿にならないため、廃止にしたいかもしれません。
赤字路線④ 石巻線 小牛田~女川
仙石東北ライン開業により石巻までは仙石線経由で行くことが出来るようになりましたが、それと並行して走っている小牛田~石巻~女川間44.7kmが赤字路線リストに入りました。
石巻までのメインルートは仙石東北ライン経由で仙台~石巻となっているため、存在意義も問われているのかもしれません。
また、石巻~女川間は路線本数が少なくなっています。
赤字路線⑤ 羽越本線新津~羽後本荘
新潟~秋田を結ぶ特急いなほが走っている羽越本線も赤字路線リスト入りです。しかも新潟~秋田までのほとんどの区間が赤字路線リストに入っており、もし廃止されればJR線で新潟~秋田まで行く場合は新幹線経由になるかもしれません。
赤字路線とは言え、「本線」となっており、重要な路線であることは間違いありません。しかも特急列車が毎日走っている路線ですが、それでも赤字ということになっています。
特急いなほが無くなる可能性も無くはないです。実際にダイヤ改正で特急列車の減車や新潟~秋田間の列車については臨時列車化されており、特急「いなほ」のほとんどの利用客は新潟~酒田間で、それより先は年末年始期間に乗車した際も「空気輸送」となっていたこともあります。
約170kmある羽越本線ですが、新潟~遊佐の間には日本海東北自動車道が整備されており、村上・酒田までのアクセスも劣勢となっており、今後も衰退していく方向であることは間違いないでしょう。
赤字路線⑥内房線 館山~安房鴨川 外房線 勝浦~安房鴨川
関東圏の大都市近郊区間も赤字路線にリスト入りしました。この区間は既にE131系導入で、ワンマン運転で2両編成の運転もある区間となっています。
この区間が廃止になれば、JRで房総半島を一周することは難しくなりそうです。
東京湾アクアライン経由の高速バスの台頭により、衰退を続けているのが現状です。
また、廃止にしたとしても多くの区間で国道128号線が並行しているため、車の方が所要時間的にも優位に立ってしまっているのも赤字の理由の一つと思われます。
赤字路線⑦ 越後線柏崎~吉田 弥彦線
新潟県に越後線というローカル線があります。
国鉄時代の慢性的な赤字の影響で最高速度が85kmに制限されているこの路線ですが、そのうち49.8kmの区間が赤字リストに入りました。
この区間は沿線人口が少なく、運行ダイヤもローカル輸送となっています。また日中は3時間間隔が空く時間帯もあり、利用しづらいのも特徴です。
また、吉田駅から出ている弥彦線もランクイン。弥彦線は現時点でもかなり本数が少なくなっており、利用しづらい路線の一つともいえます。
赤字路線⑧ 奥羽本線 新庄~弘前
こちらも「本線」の名前が付いている路線ですが、なんと約180kmの区間が赤字路線のリストに入りました。
新庄駅で接続があまり良くないというのも理由の一つにはなりそうですが、徐々に高速道路の整備が進んでいることも理由です。
本数も2時間に1本となっている時間帯もあり、日常利用には使いづらい路線です。
また、路線が不通になった時に寝台特急が走っていたころは迂回路に使われた実績がありますが、現在は迂回路で使えることもあまりないと思われます。
赤字路線⑨ 陸羽西線、陸羽東線
新庄を経由して酒田~古川までを結ぶ、陸羽東線、陸羽西線は全線が赤字路線にランクインしました。
この路線では特急列車もなく、利用客も少ないことが特徴の路線です。
また、仙台方面から新庄、酒田への需要が薄いことも原因の一つかもしれません。
赤字路線⑨ 大糸線 南小谷~信濃大町
大糸線も赤字路線にランクインしました。この路線はスキー場がある白馬スキー場がある他、特急あずさが乗り入れているのも特徴の路線です。
しかしながら、豪雪地帯のため、大雪の際には運転見合わせになることもあります。
大雪の際には危険な雪道を運転しなくて良いという点は、大糸線の存在意義はあると思いますが、除雪費もあり運営していくのは大変かもしれません。
赤字路線⑩ 上越線 水上~越後湯沢
新潟~群馬県の国境を超える上越線も赤字路線にランクインしました。新潟方面への重要な路線ですが、赤字路線となっています。
廃止されたとしたら、青春18きっぷで新潟に行くのはできなくなるかもしれません。
赤字路線⑪ 中央線 辰野~塩尻 辰野支線
首都圏の主要路線中央線がランクイン?と思った方もいると思いますが、少し違います。
中央線の辰野~塩尻間は辰野支線という路線があり、飯田線から塩尻までの最短ルートの路線となっています。
マニアックなローカル線ですが、1時間~2時間に1本は運転されています。
ただ、やはり特急あずさが走行する路線ではないため、維持するのは大変かもしれません。
その他の赤字路線
その他の赤字路線は次の通りです。
- 五能線
- 小海線
- 気仙沼線
- 久留里線
- 北上線
- 烏山線
- 釜石線
- 鹿島線
- 男鹿線
- 大湊線
- 大船渡線
- 水郡線
- 只見線
- 津軽線
- 八戸線
- 花輪線
- 晩節再選
- 磐越東線
- 山田線
- 米坂線
※一部路線では一部区間のみ赤字路線として公表されています。