2022年12月11日の運転を最後に、阪急電車の京都線で走っている観光列車「京とれいん」の定期運転が終了となりました。

また、「京とれいん」の定期運転終了に合わせて、「快速特急A」という種別名も廃止になりました。

阪急電車「京とれいん」とは?

西院駅を通過する「京とれいん」阪急6300系6354F
京都市内の地下を走行する京とれいん

「京とれいん」は阪急京都線で運転されている観光列車です。

土休日ダイヤでのみ専用の6両編成を用いて「快速特急」または「快速特急A」の種別名で定期列車として運転され、直前の特急に続行して走る形で大阪梅田~京都河原町間で運転されています。

また運行のない平日は臨時列車や貸切列車などとしても走る場合があります。

京とれいんには2種類あり、2011年から走り始めた「京とれいん」のほか、2019年からは新たに「京とれいん 雅洛」も運転を開始しました。

今回運転終了となるのは「快速特急A」として運転されていた「京とれいん」で、「快速特急」として運転される「京とれいん 雅洛」に関しては引き続き運転が継続されます。

茨木市駅を通過する「京とれいん 雅洛」阪急7000系7006F
引き続き運行予定の「京とれいん 雅洛」

「京とれいん」ってどんな電車だったの?

「京とれいん」は2010年初頭?頃まで京都線で特急用電車として活躍していた8両編成の電車のうちの6両に対して、車内の大幅な改装を受けて誕生した電車となります。

6300系の6354F(6354×8R)の編成が種車となっています。

「京とれいん」の外観

阪急6300系6354F「京とれいん」の外装
特徴的な銀色の扇子が描かれた車体

阪急電車お馴染みのマルーンの塗装はそのまま、金色や銀色の扇子のラッピングなどにより、阪急電車のイメージと古都・京都の和風なイメージが表現されています。

阪急6300系6354F「京とれいん」の外装
金色の扇子が描かれたパターン

「京とれいん」の車内

阪急6300系6354F「京とれいん」の車内
5号車の車内全景

阪急電車の車内と言えば「木目調の壁紙」と「ゴールデンオリーブ色(緑色)の座席」の印象がかなり強いですが、「京とれいん」に関しては大きく印象が変わっています。

特に座席周りの雰囲気が大きく変わっており、両端の2両は「京都の町家」をイメージして改装されています。

座席も1号車・2号車は赤系の座席、5号車・6号車は緑系の座席になり、どちらも和風の柄が入った座席になっていました。

阪急6300系6354F「京とれいん」の座席 1号車、2号車
1・2号車の座席
阪急6300系6354F「京とれいん」の座席 5号車、6号車
5・6号車の座席

中間の3号車・4号車は「京町家」をモチーフに改装され、半個室のボックス席とされました。

座席は主に4人が対面に向かい合うもの(2列席)と、2人が対面に向かい合うもの(1列席)の2種類がありました。

阪急6300系6354F「京とれいん」の座席 3号車、4号車
3・4号車の座席

「京とれいん」の停車駅は?

京とれいんが運転される列車種別である「快速特急」「快速特急A」の停車駅は大阪市内と京都市内に絞られていました。

「快速特急」と「快速特急A」の停車駅の違いは十三で、「京とれいん」で用いられる6300系は扉の位置が他の車両と大きく異なり、ホームドアに対応できなくなるための措置でした。

以下停車駅になります。(特急停車駅のみ抜粋)

停車=〇 通過=レ

駅名よみかた特急快速特急
(京とれいん 雅洛)
快速特急A
(京とれいん)
大阪梅田おおさか うめだ
十三じゅうそう
淡路あわじ
茨木市いばらきし
高槻市たかつきし
長岡天神ながおかてんじん
かつら
烏丸からすま
京都河原町きょうと かわらまち

なお実際には「快速特急A」も十三駅には停車し、扉の開閉・乗降扱いを行わない「運転停車」としての停車でした。

なぜ「京とれいん」は引退することになった?

茨木市駅を通過する「京とれいん」阪急6300系6354F
茨木市駅を通過する京とれいん

運行から約10年が経過した2022年12月17日のダイヤ改正で、「京とれいん」が通常充当されることになる「快速特急A」の廃止が発表されました。

追って「京とれいん」の定期運転終了も発表されましたが、なぜこのタイミングで運転終了となったのでしょうか。

車両の老朽化

「京とれいん」として走っている6300系6354Fは、1977年3月に建造された車両です。

既に45年以上も使用されていることになり、鉄道車両の一般的な耐用年数である約30年~40年程度を優に越しています。

また「京とれいん」になる前は特急列車などで長時間連日過酷な走行を繰り返しており、車両に対するダメージの蓄積も比較的多いはずです。

「京とれいん」に改装されてからは走行距離こそ少なかったですが、経年と過去の過酷な走行が定期運用の終了の決め手と考えられます。

ホームドアに対応していない

6300系は京阪間を結ぶ特急としてより多くの快適な座席を設けるために、扉が車両のかなり端によって設置されています。

一方でこの扉配置は6300系以外の車両とかなり異なった位置であり、阪急が現在設置を進めているホームドアに対応しておらず、ホームドアがある駅に停車しても物理的に乗客の乗り降りができません。

これが十三駅で乗客の乗り降りができない理由となります。

電車の種別表示にも小さくではありますが「十三通過」の文字がありました

また十三駅以外にも阪急電車ではホームドアの設置を進める見込みであり、ホームドアの設置が進むにつれて、扉の位置が大きく異なる「京とれいん」を含めた6300系の存在が徐々に邪魔になってしまいます。

またホームドアが設置された駅で乗降できないとなると、緊急時などの際にも支障が出る恐れもあります。

そのためこのタイミングで定期運転終了という形になったと思われます。

なお現在6300系の後釜として登場し、京都線の特急メインで使用されている9300系や、「京とれいん 雅洛」に関してはホームドア問題をクリアしているため、今後も問題なく継続使用されます。

今後「京とれいん」はどうなる?

12月11日の運転を最後に定期運転が終了した京とれいんですが、今後はどうなるのでしょうか?

6両編成での運転が可能な嵐山線で運転させるなどの予想もあるようですが、「京とれいん」の分解を伴う大規模な法定検査(自動車でいう「車検」)の期限が実は直前まで迫っています。

最終検査は2019年2月であり、電車の検査は通常4年または60万kmに満たない範囲で行われます。

これを考えると2023年2月頃に検査期限が切れてしまうため、検査を通さないという判断となった場合は、このまま廃車となってしまうでしょう。

もし検査を通したとしたら、嵐山線で余生を過ごす可能性も否定できないですが、嵐山線で余生を過ごすことになったとしても先は長くないでしょう。

短期的に臨時列車などで使用される可能性は否定できませんが、このまま廃車になるのではないでしょうか。

まとめ

ここまで解説した事柄を簡単にまとめます。

  • 阪急京都線の観光列車「京とれいん」について
  • 「京とれいん」が定期運用を終了したことについて
  • 「京とれいん」の定期運転終了の理由について
  • 今後「京とれいん」がどうなるのかについて

以上のことがわかったのではないかと思います。

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