今回は京急が速すぎる・遅延が多いとよく言われているのかについて、解説していきたいと思います。

一体なぜ京急線では遅延多くが発生するのでしょうか?

まずは京急は速すぎるのかについて紐解いていきましょう。

京急とは?

京急線の電車
京急線の快特(2100形)

京急は東京都と神奈川県に合計5つの路線を構えています。

泉岳寺・品川と浦賀の間を途中京急蒲田、京急川崎、横浜、上大岡、横須賀中央、堀ノ内などを経由して結ぶ本線のほか、京急蒲田から分岐して羽田空港へと至る空港線、京急川崎から分岐して川崎大師を経由して小島新田へと至る大師線、金沢八景から分岐して逗子・葉山へと至る逗子線、堀ノ内から分岐して京急久里浜、三浦海岸を経由して三崎口へと至る久里浜線があります。

5つの路線を合わせた総延長キロ数は87.0kmとなり、これは大手私鉄としては相鉄、阪神、京王に次いで4番目に短い数値となります。

直通運転先の多い京急

京急と直通運転を行う事業者も多い

京急は直通運転を行う他事業者が多い鉄道会社の1つでもあります。

京急は1968年以降、泉岳寺を介して新橋・日本橋・浅草方面へと向かう都営地下鉄浅草線と直通運転を行っています。

さらにそれだけでなく、浅草線押上駅を経由して京成線、京成線京成高砂駅を経由して北総線、更に京成線の車両がごくわずかに乗り入れるだけですが、京成線東成田駅を介して芝山鉄道線とも直通運転を行っています。

この直通運転により、横浜・横須賀方面と都心や下町、また稀に千葉方面を結んでいるだけでなく、都心や千葉県と羽田空港を結ぶ役割、更には羽田空港と成田空港という東京の空の玄関口2つを鉄道で結ぶ役割も果たしています。

京急線から成田空港まで行く電車もある(写真は成田スカイアクセス線の電車)

なぜ京急は速すぎると言われるのか?

京急線の速さの象徴である快特(新1000形)

そんな京急ですが、なぜ速すぎると言われることがあるのでしょうか。

その理由は料金追加不要の列車では、大手私鉄の中では最速の120km/hで走っていることが最大の理由と考えられます。

これは名鉄の快速特急・特急と並ぶ数値となります。

なお有料特急にはこれより上の速度を出すものがあり、近鉄特急の130km/h、成田スカイアクセス線を経由する京成の「スカイライナー」がたたき出す160km/hが該当します。

しかしそれ以上に、京急が速いと言われる理由はあるかと思います。

それは京急が「速い」とよく言われる京急川崎~横浜間では住宅地を走行しており、料金追加不要列車の最速達種別の快特が、民家とスレスレの状態で120km/hの高速運転をしていることが、利用者が「速い」と感じている理由ではないかと考えられます。それゆえ、「路地裏の超特急」という京急を指す言葉もあります。

また、京急が採用している電車の車体長さは、JRなどが採用している20m級の標準的な車体より2m短く、18m級の車体を採用していることも、京急が「速い」と言われことに結びつくと考えられます。
これは1両あたりの目に映る時間が短いことが影響すると考えられ、体感的に実際よりも速く感じることもあるようです。

民家スレスレの場所を高速で走る京急

そして、高加速度かつ高性能の車両を大量に導入している点も、京急が速いと言われる理由のひとつでしょう。
京急の電車は多くの地下鉄電車よりも加速が速いことが多く、0キロからの起動加速はもちろん、高速域でも昔から加速の強い車両が多いです。

自動車でもそうですが、高い加速度と高い最高速度を両立することは基本的に難しいです。

電車の場合これがどうかというと、加速・減速の機会が多い地下鉄電車などの場合は、加速寄りに性能を振って最高速度は抑えられることが多い一方、特急電車など最高速度付近を出す機会が多く、頻繁に加速・減速をしない電車の場合は、高速寄りに性能を振り加速は抑えられる傾向が多いです。

無茶が効く現代のインバータ制御が普及したほか、東京圏を中心に直通運転の拡大によって直通先を高速で走る機会も増えた現代では、その原則も薄れましたが今でもこの相反する事柄の両立は難しいです。

一方で京急はインバータ制御が普及する以前から、例外こそあれどこの相反する事柄を高い次元で両立し続けていました。

また高速運転という点で見ると、つくばエクスプレスや常磐線の方が130km/hと京急より10km/h速い速度となっています。

しかしつくばエクスプレスや常磐線の場合、高速走行をしている主な区間は高架区間だったり田園地帯が広がっているなどで、さほど代わり映えはしないのに対し、京急の場合は田園地帯ではなく、民家やビルなどが立ち並ぶ市街地を走り抜けるという違いがあります。

更には横浜~京急鶴見付近間では、JR京浜東北線や東海道線とデッドヒートを繰り広げる光景が見られることもあります。

先述した車体長さの事柄もあり、それもあってか体感速度では京急のほうが「速い」と思う人も、多いのではないのかと考えられます。

実際に京急は速いのか?

東海道線の電車、E233系3000番台
ライバルとなるJR東海道線

そんな速いと言われる京急ですが、実際に早いのでしょうか。

しかしそれはデータを見ると否定できます。

品川〜横浜間では快特と、京急蒲田駅から先の区間で羽田空港方面へと向かうエアポート快特が120km/h運転を行っています。

しかし東京都内の区間である品川~鮫洲間は急カーブが多く、実質的に120km/hの速度が出せる区間は鮫洲~横浜間だけとなっています。

それ以外にも平和島駅、神奈川新町~子安間上り線のポイント付近など、速度制限を受ける箇所も少し存在します。

ただそれでも品川~横浜間は平均17分~19分ほどで快特が結んでおり、これは並行するJR東海道線の品川~横浜間と肉迫する所要時間となっています。

しかも東海道線は品川・川崎・横浜の順に停車して所要時間17分なのに対し、京急の快特は品川・京急蒲田・京急川崎・横浜と1駅停車駅が多いです。

東海道線が速度制限を食らう箇所がないこと、および京急の条件などを考えると、京急の快特はかなり頑張っている方と言えるでしょう。

一方で、横浜以南の区間はどうでしょうか。

横浜以南の区間では、三浦半島などの丘陵部を経由します。

横浜以北の区間が基本的に古くからのトンネルがないのに対して、横浜以南の区間はカーブが多くなり、更に1駅先の戸部駅を過ぎると、急カーブを伴ったトンネルも出現します。

急カーブを抜ける区間も多い

丘陵部という地形的な条件もあってか、どうしても横浜以南の区間は速度制限のある箇所が多くなってしまい、この区間は快特でも最高速度110km/hに制限されます。

また横浜以北の区間でも120km/hまで出せるのは、朝ラッシュ時間帯以外の快特とエアポート快特のみです。

それ以外はよくて110km/h止まり、また120km/h運転対応車種が直通先各社でも普及したこともあり、現在の詳細は不明ですが、以前は京急以外の電車を使う列車も原則110km/h止まりでした。

また有料座席指定列車「モーニング・ウィング号」および「イブニング・ウィング号」も正式な列車種別は「快特」のようであり、許可的には120km/hを品川~横浜間で出せますが、列車密度が高い時間帯に走行することなどから、110km/hまでしか出さないケースが多めです。

ラッシュ時間帯は特急メインの運転に 最近日中も特急の運転本数が増えた

また朝夕のラッシュ時間帯は、特急メインの運転となります。

そしてラッシュ時間帯は日中時間帯と比べて列車本数も多いうえ、複々線区間が横浜以南の金沢八景〜金沢文庫間の1区間だけであるなど、どうしても列車の渋滞が発生してしまう要素・ケースが多いです。

京急だけで東京都心の品川・新橋方面へと移動するには時間がかかってしまう事もあり、横浜以南からの乗客が品川駅ではなく横浜駅で上野東京ラインや湘南新宿ラインなど、JR線に乗り換えて都心へと向かうケースも多々あります。

それを反映するかのように、実際京急の最混雑区間は横浜以南の戸部~横浜間となっています。

遅延が多すぎる理由 一体なぜ?

京急といえば「速い」というイメージがありますが、そのイメージが逆に遅延が多発してしまう事例もあります。

それは人身事故などに代表される事故です。

人身事故などによって遅延の起こる確率が高い路線は幾つかあり、京急も2017年にワーストクラスの人身事故発生件数を記録するなどありましたが、2015年頃までの京急は遅延件数が比較的少ない方で、遅延から見ると優良路線とみなされる路線でした。

しかし2020年代に入ると、京急線内の遅延発生傾向が一気に変わります。

京急本線だけで見ても2020年は、首都圏の鉄道路線でワースト2の人身事故発生件数になってしまいます。

そして2021年は路線別で見ても、全国ワーストの人身事故発生件数となってしまい、2022年もワースト10にランクイン入りしています。

この遅延の最大の理由とも言っても過言ではない人身事故は、日中時間帯、高速運転が可能な横浜以北、京急本線の区間で通過列車に飛び込む傾向が多いです。

しかしここ最近はそれとは関係のない区間で人身事故が起こることも多くなっています。

京急の安全対策

もちろん、京急だって何も対策をしていないわけではありません。

これら人身事故や転落事故など、安全対策として京急ではホームドアの設置を進めています。

京急線内もホームドア設置駅が増えつつある

ホームドアは先行して設置された主要駅の京急蒲田、京急川崎、横浜、上大岡、羽田空港第3ターミナル、羽田空港第1・第2ターミナル以外にも、快特通過駅でも設置を続けており、京急鶴見、平和島、追浜、汐入、日ノ出町、京急東神奈川でホームドアの設置が完了しています。

そのほかの快特通過駅にも直近のホームドア設置計画があり、梅屋敷、八丁畷、生麦、弘明寺、杉田にもホームドアの設置予定があります。

特に梅屋敷、八丁畷、生麦の3駅は普通列車しか止まらない駅です。

近年は主要駅よりも快特通過駅へ設置する傾向が強く、これは利用状況や人身事故の発生状況等を考えたものとなっていると推測できます。

しかし、ホームドアを設置したところで人身事故の対策につながるのかどうかと言えば、そうでもないのが現状です。

現在京急で設置が進められているホームドアは、衝動的なものや泥酔、混雑などによる事故転落を防ぐことは可能ですが、決意的なものであれば飛び越えることが可能なホームドアのため、完全に人身事故を防ぐことは難しいのが現状です。

また神奈川や京急新子安など、一部の快特通過駅では極端にホームが狭くなっていることも問題です。

阪急神戸線春日野道駅のように、狭いホームの駅でもホームドアを設置しようとする動きこそありますが、神奈川や京急新子安などはあまりにも狭すぎる箇所があるため、物理的にホームドアの設置が難しい可能性は否定できません。

まとめ

これまで京急が速すぎる理由と遅延する理由について解説していきましたが、まとめると

・ 大手私鉄の料金不要の列車としては、最速の速度を出すことが理由と考えられること
・ 体感的な速度だけでいうとつくばエクスプレスなど、より速度を出す路線よりも速いと感じる場合があるらしいこと
・ 一方で全体的に見るとそこまで早くはないということ
・ 速いイメージ故か、近年人身事故が頻発していること
・ 人身事故対策として快特通過駅にもホームドア設置を進めているが、完全に人身事故を防ぐことは不可能であること

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