今回は京成線の佐倉行きが、なぜ存在するのかについて解説していきます。
京成佐倉駅とは?
そもそも謎の行き先である「佐倉」とはどんな駅なのでしょうか?
京成線の佐倉駅は、正しくは「京成佐倉駅」と称します。
京成佐倉駅は、千葉県佐倉市の比較的北側に位置する、栄町という場所にあります。
京成線内および乗り入れ先各路線における駅や車内の放送、行先表示などの案内では「京成」を省略した「佐倉」だけで表記されるケースが多いです。
ただし最近になって正式名称で称するケースが増え、現在の省略表記の佐倉での案内については、駅名板や京急の車両の行先表示などごくわずかに限られます。
これは乗り換えアプリなどにおいて省略駅名ではなく正式駅名で表記されるケースが多いためであり、スマートフォンの普及などによる時代の流れと、非沿線民の利用が多い京成線ならではの変更と言えるでしょう。
会社名などを省略した表示から正式な表示に改める事例は過去に京急などでもありましたが、近年は名鉄など他の鉄道事業者でも見られる傾向があります。
なお駅名の頭に「京成」と付ける理由は2kmほど南にJR佐倉駅があるためで、JR佐倉駅は総武本線と成田線の分岐駅となっています。
京成佐倉駅は佐倉市役所の最寄り駅であり、年末年始などに臨時運転されるシティライナーを除き、京成線の全列車が停車します。
位置関係では成田空港よりも7駅、約18.3km上野寄りの駅であり、各駅停車での所要時間はおよそ22分です。
一方で1日の平均乗降人員は2021年度のデータで14226人であり、これは特急通過駅のユーカリが丘駅や京成臼井駅より少ないです。
京成佐倉駅周辺の施設ですが、南口からJR佐倉駅にかけては行政機関が集約しています。駅には南口と北口の2つがあり、南口側はオフィスビルやマンションなどがある繁華街、北口側は住宅街が広がっています。
JR総武線も佐倉行きがある
佐倉行きとなると京成線の列車をイメージする方が多いと思います。
しかしJR総武線でもごくわずかに佐倉行きの電車があります。
JR線の佐倉行きはごくわずかですが、総武快速線の東京駅や横須賀線内から直通してくる列車がメインで、千葉駅始発の総武線列車でもあります。
久里浜や横浜や品川、新橋、船橋などの乗換駅では、京成線の佐倉行きとJR線の佐倉行きの2つが見られるということになります。
京成佐倉行きはなぜ運転されている?
京成線といえば東京都心と成田空港を結ぶ路線というイメージが強いため、佐倉が終着駅となっているのはやや中途半端に感じられます。
成田空港まで行かない、佐倉行きの列車が設定されているのはなぜなのでしょうか。
別に京成佐倉駅の周辺に大きな車庫があるとかでもなく、あるのは成田空港寄りに片渡り線があるのみです。
そもそも京成線は京成電鉄が運営する路線で、京成佐倉駅が乗り入れる京成本線含めて7つの路線があります。
そのほか都営地下鉄浅草線や京急線、北総線、芝山鉄道線などの路線とも直通運転を行っています。
佐倉行きの電車を京成線だけでなく、都営浅草線や京急線でも見られるのはそのためです。
そのうち京成本線は東京の上野と千葉県の成田空港を結び、約70kmの路線距離に42の駅があります。
京成の「京」は東京、「成」は成田を示し、その名の通り京成電鉄は東京と成田を結ぶために生まれたことがわかります。
京成佐倉駅がある理由
それでは佐倉行きがある理由を説明するために、まずは京成佐倉駅から成田空港駅までの間の利用客数をグラフで見てみましょう。
成田市の中心駅である京成成田駅の利用客が突出して多いことがわかる一方、京成電鉄全駅で利用者数ダントツ最下位の大佐倉駅を筆頭に、宗吾参道駅・京成酒々井駅など利用客が突出して少ない駅があることもわかります。
一方で京成佐倉駅より手前の運転系統分断の境界点となる、京成津田沼駅と京成佐倉駅の間の利用客をグラフ化したものも見てみましょう。
全ての駅にて利用客が1万人以上あり多いことがわかるほか、主要他路線と接続がある京成津田沼駅や勝田台駅の利用者はかなり多いことがわかります。
また近隣に巨大団地を抱える八千代台駅や大学キャンパスなど教育施設が多数ある京成大久保駅も、利用者が多いことがわかります。
理由は効率的なダイヤにする狙い
佐倉~成田空港間は約18kmの距離にあり、各駅停車で約22分の所要時間です。
この区間の乗降人数が少ないため、佐倉折り返しにすることで京成は効率的なダイヤを組もうとしたのと考えられます。
佐倉行きの電車は佐倉駅に到着後そのまま折り返し運転を行ないますが、日中時間帯その先の輸送を担っていたのが特急です。
特急が佐倉~成田空港間の各駅に停車することで、効率よく需要に応えていたのです。
ただし現在は都営浅草線からの快速が成田空港まで行くようになり、特急は日中時間帯ほとんど運転されなくなっています。
そのほかに京成佐倉~京成成田間ノンストップの快速特急が、京成上野を始発・終着として40分に1本運転されるようになっています。
ちなみに京成佐倉駅の付近には先程も述べた通り規模の大きな車庫はなく、大佐倉寄りに片渡り線があるのみです。
京成佐倉駅まで運転した電車はこの片渡り線を利用して本線上で折り返すか、3駅先の大きな車庫を併設する宗吾参道駅まで回送したうえで、宗吾参道駅の設備や付近の車庫で折り返すかそのまま車庫へ入庫することになります。
京成佐倉行きは実は増えた?
ところでこの佐倉行きですが、なぜよく見るようになったのでしょうか。
佐倉行きの電車が設定されたのは、2006年12月のダイヤ改正からです。
これ以前、京成佐倉駅には普通、快速、通勤特急、特急という4つの種別の列車が停車していましたが、これから、このダイヤ改正のポイントを解説します。
まず一つ目は、京成佐倉~京成成田間をノンストップで運転していた特急が、京成佐倉駅から先の各駅に停車するようになった点です。
代わりにそれまでの特急と全く同じ駅に停車する列車として、「快特」が新たに設定されていますが、京成線にはほかに「快速」があり、この快速と発音が似ていてややこしくなっていたため、徐々に快速特急に改められて、2010年7月からは正式な種別名も「快特」ではなく「快速特急」になっています。
そして二つ目は、これまで京成成田発着だった日中の快速の大半が、京成佐倉駅で折り返すようになった点です。
特急が京成佐倉〜京成成田間で各駅停車になったことに伴い、快速を利用して京成佐倉駅まで来た乗客のうち、それよりより先へ行く乗客はいったん京成佐倉で下車し、接続する特急を利用することとなったのです。
この京成佐倉行きの快速は当時、京急線羽田空港からやってくる列車がメインで、もともとは羽田空港と成田空港を直結する特急でした。
しかし通しで利用する乗客が少なかった影響か、2002年に京成線内の種別が新設された「快速」に降格され基本的に京成成田駅までの運転になり、2006年になって京成佐倉駅までの運転に短縮されたのです。
京成佐倉にまつわるヘンテコな行先
2006年12月のダイヤ改正時点で多く設定された京成佐倉行きの電車の多くは、もともと成田・羽田の首都圏両巨大空港を結ぶための列車でした。
その役目を背負った列車が京成佐倉までの運転に短縮されたことが影響したせいなのか、ここで「成田空港方面佐倉」というヘンテコな案内表示が登場しました。
佐倉という地名はそれほど有名ではないためか、成田空港に行きたい人が佐倉行きの列車を見たら戸惑うのではないかと考え、この表示がなされたと思われます。
しかし「成田空港方面佐倉」という行き先表示の列車を見て、「成田空港に行くならこの電車に乗って佐倉で特急に乗り換えよう」と分かる人がどれだけいたのかは謎です。
ちなみに英語はただ単に「Sakura」と書かれているのみですが、京急のLED式車外の車両案内表示には英語表記もありました。
そこにおける英語表記は「Sakura via Narita Airport」。
恐らく「品川方面泉岳寺」などと同じ表現を用いたために、こうしたのだと思われますが、これだと「成田空港経由佐倉」という矛盾した訳の案内表示になるようです。
ちなみに成田空港方面佐倉と正しく英語で訳すならば、「Sakura for Narita Airport」などと表示するのが正しいようです。
なお現在は成田スカイアクセス線経由のアクセス特急が、主に羽田・成田の両空港を結ぶ存在となっていることもあり、ごくまれに京急線からの電車が表示することがある以外原則的に「成田空港方面佐倉」というヘンテコ表示は見られなくなっています。
また幾度のダイヤ改正の中で、近年は京成佐倉行きの電車はかなり数を減らしており、特に都営浅草線や京急線からの京成佐倉行きは、日に数本程度まで減っています。
これはそれまで京成佐倉行きの快速だった、都営浅草線からの列車が成田空港まで延長されたことが理由であり、その代わりに先程も述べましたが、日中時間帯の京成上野駅~成田空港間の特急が運転されなくなり、代わりに京成佐倉行きの快速と京成成田行きの快速特急が、交互に運転される形態になったからです。
まとめ
ここまでの京成佐倉行きについてのまとめですが、
・京成佐倉は千葉県にある駅
・京成佐倉行きは2006年から急に増えたこと
・京成佐倉行きはJR線にもある
・京成佐倉行きのヘンテコ行先も存在すること