2023年に開業する宇都宮LRT(ライトライン)。
今回は75年ぶりに開業する路面電車宇都宮LRTについてまとめてみました。
宇都宮LRTとは?路線図
宇都宮LRTとはそもそもどんな路線なのでしょうか?
宇都宮LRTは宇都宮市の宇都宮駅東口停留所から芳賀郡芳賀町の芳賀・高根沢工業団地停留所までの全長14.6kmの路線となっています。
正式名称は宇都宮芳賀ライトレール線となるのですが、宇都宮ライトレールの名前が案内上は使われる予定です。
宇都宮LRTが開業すると宇都宮駅から大学・ショッピングモール(ベルモール)・小学校や芳賀地区の街から宇都宮市内まで電車で移動できることになるほか、工業地帯・ホンダなどへのアクセスが向上します。
また、開業はこれまで路面電車がなかった都市としての開業は戦後初、軌道法に基づく路面電車の開業は75年ぶりとなっています。
宇都宮LRTの未開業区間について
宇都宮LRTは実は全線開業はまだしていません。路線図を見てもらうと分かりますが、予定としてはJR宇都宮駅の西側も整備される予定で、東武宇都宮駅・桜通り十文字交差点まで開業する予定となっています。
しかしながら、JR宇都宮駅の東西を結ぶ路線が、急こう配で運転される予定であることなどが理由で、2023年には開業せず、この後整備される予定です。
また、宇都宮駅東口については高架駅となる予定で、宮の橋交差点付近までが高架区間になることが予定されています。
西側の整備区間延伸について 開業時期は?
宇都宮LRTの西側の区間についてですが、公式ホームページに2024年をめどに軌道事業の特許申請をし、2026年から工事に着手し、2030年前半に開業することを目標に計画を進めているとのことです。
さらに今後大谷石などがある大谷観光エリアへの延伸も検討されていますが、開業時期については未定となっています。
開業のきっかけは?当初はゆりかもめ・モノレールが計画されていた?
そもそも、宇都宮LRTはなぜ開業することになったのでしょうか?
そのきっかけは1987年まで時代がさかのぼります。
当時駅東口の区画整理などが検討されていた時期がありました。
その際、知事が「宇都宮駅東口から清原工業団地までの約10kmの区間に実験的に新交通システムを導入したい」という意向でした。
しかしながら、ゆりかもめなどに採用されている新交通システムやモノレールといった交通手段の場合、建設費が高額なことが問題となりました。
そのため、建設費用が安価な路面電車方式が採用されることになったのです。
JR宇都宮線・東武線への直通計画
宇都宮LRTは将来的にJR宇都宮線・東武線への直通計画があります。
そのため線路幅についてはJR線や東武線と同じ、1067mmが採用されています。
また既存の路面電車では直流600Vの架線電源を採用する場合がほとんどですが、宇都宮LRTでは直流750V電源が採用されています。
宇都宮LRTはいらない?失敗?
実は宇都宮LRTはいらないのではないかという意見も出ています。
開業を前に、市民団体「宇都宮市のLRTに反対し公共交通を考える会」が設立されるほどです。
巨額の予算を投じているため採算が合わないなどの声も上がるのは当然と言えます。
ですが、今の時点で空き地や農地となっている場所でも、今後宇都宮LRT開業によって宅地化が進む駅もあるのではないでしょうか?
特に開業前は田んぼだったところに駅ができるところもあり、「秘境駅」になるのか、「駅徒歩1分」の便利な物件ができるのか、動向が今後気になるところです。
しかしながら、開業初日と2日目は大幅な遅延が発生してダイヤが乱れるほどの盛況でした。
閑散としていることよりも、今後は混雑にどう対処するかも課題となっています。
今後の動向が注目されます。
開業してみなければ分かりませんが、利用客が予定通り伸びなかった場合は「失敗」と言われてしまうかもしれません。
なお、宇都宮LRTは開業4年目で9.7億円の売り上げということで差額の経費を差し引き利益が1.5億円を見込んでいるとのことです。
反論意見も 関東バスを使っていた人からすると負担軽減へ
宇都宮LRTがいらないという意見もありますが、沿線住民や通勤通学客からすると恩恵を受ける人も多そうです。
例えば、宇都宮駅から県立宇都宮清陵高校へ通学する人の場合、これまで関東バスに乗車して通学していました。
関東バスの場合通常の料金で運賃は510円もかかり、所要時間も33分を要します。
宇都宮LRTの正式運賃は既に発表されており、宇都宮駅東口~清陵高校前間は300円となっていることから、片道200円も負担が軽減され、通学定期券もおそらく安くなるものと思われます。
清陵高校前停留場の近隣には作新学院大学もあり、学生さんや学生さんを抱える親御さんにとっても、家計負担が優しくなると考えたら待望の路線でしょう。
所要時間についても先のグリーンスタジアム前までが27分ということから、所要時間も短縮される見込みです。
一方で、並行する関東バスではベルモールへ向かう客を中心に宇都宮LRTに乗客が集中し、乗客0人の便もあることからかなりお客を取られているようです。
ホンダも通勤バスを廃止してLRTでの通勤に切り替え
芳賀地区に大規模な研究開発拠点などを構えるホンダ(本田技研工業,ホンダ技術研究所)は、渋滞緩和とマイカー通勤する人を減らすため、宇都宮駅東口から芳賀町にある事業所までバスを運行していました。
しかし今回のLRT開業と合わせてバスを廃止して、LRTでの通勤を呼びかけるということです。
朝の渋滞にも巻き込まれず通勤できるという点については、かなり大きな利点かもしれません。
宇都宮LRTの乗り方・利用方法について
料金の支払い方法は交通系ICカードと現金の二種類があります。
ICカード利用の場合は?
交通系ICカードの場合は乗車時と降車時に各扉のICカードリーダーにタッチします。
タッチするICカードリーダーは乗っている号車から一番近いところで大丈夫です。
ただし、残高不足でチャージが必要な場合は列車の一番前か一番後ろの運賃箱でチャージが可能です。チャージを押して→カードタッチ→紙幣挿入→カードをタッチでチャージできます。
チャージボタンを押さなければ現金の両替が可能です。
現金利用の場合
現金利用の場合は各停留所(駅)で整理券を取ってから乗車する必要があります。
車両には整理券を発行する機械がないので注意が必要です。
また降りるときは、進行方向3両のうち一番前の扉しか降りられません。
混雑している時には身動きが取れなくなることがあるので、できるだけ運転席に近い場所から乗車しましょう。
宇都宮LRTの料金について・運賃表
宇都宮LRTの料金についてですが、次のように発表されています。
乗車駅から3kmまで150円均一料金。
乗車駅から3kmから7kmまで2kmごとに50円加算
7kmから3kmごとに50円加算となっています。
つまり料金帯としては150円~最大で400円での変動運賃となっています。
駅名 | 大人運賃 | こども運賃 |
東宿郷 | 150 | 80 |
駅東公園 | 150 | 80 |
峰 | 150 | 80 |
陽東3丁目 | 150 | 80 |
宇都宮大学陽東キャンパス(ベルモール前) | 150 | 80 |
平石 | 200 | 100 |
平石中央小学校前 | 200 | 100 |
飛山城跡(とびやまじょうあと) | 200 | 100 |
清陵高校前 | 300 | 150 |
清原地区市民センター前 | 300 | 150 |
グリーンスタジアム前 | 300 | 150 |
ゆいの杜西(ゆいのもりにし) | 350 | 150 |
ゆいの杜中央(ゆいのもりちゅうおう) | 350 | 150 |
ゆいの杜東(ゆいのもりひがし) | 350 | 150 |
芳賀台 | 350 | 150 |
芳賀工業団地管理センター前 | 350 | 150 |
かしの森公園前 | 400 | 200 |
芳賀・高根沢工業団地 | 400 | 200 |
なお、障害者運賃は大人運賃の半額となります。
宇都宮駅東口停留場から主な目的地までの料金
宇都宮大学陽東キャンパス前:150円
→ベルモール、宇都宮大学陽東キャンパスなどへの最寄り
清陵高校前:300円
→県立清陵高校、私立作新学院大学、宇都宮市立清原中学校などへの最寄り
グリーンスタジアム前:300円
→栃木県グリーンスタジアム(栃木SC本拠地)、キヤノン光学技術研究所・宇都宮工場などへの最寄り
芳賀・高根沢工業団地・・・400円
→本田技研工業・本田技術研究所 一部研究開発拠点およびNSXリフレッシュセンターなどへの最寄り
宇都宮LRTの快速列車について
宇都宮LRTでは日本の路面電車では初となる、快速列車の運転が可能な設備が設置されています。
平石とグリーンスタジアム前は2面4線の駅(停留場)となっており、普通列車と快速列車の追い越しが可能となるように設計がされています。
なお、運転される場合は平日ラッシュ時間帯のみのでの運転で、そのほかの時間は普通列車での運転となる予定です。
ただし開業時は運賃収受などに時間がかかるなどが理由で、快速列車の運転は行われない予定です。
混雑してダイヤが大幅に乱れることを予見して快速運転を実施しなかったのは評価されるべき点なのかもしれません。
宇都宮LRT時刻表・ダイヤ考察
宇都宮LRTの各停留所の時刻表が公開されており、それに基づき考察していきたいと思います。
始発列車は何時から運転?
始発列車についてですが、一番早い列車で4時頃に運転されます。
ただし、宇都宮方面ではなく、芳賀・高根沢工業団地方面の始発列車となります。
平石駅を4時50分に発車する列車が始発列車です。
宇都宮方面については平石駅発宇都宮東口行きの列車が5時42分に設定されており、これが始発列車となっています。
宇都宮線の始発列車には接続していないのは残念な点 空港アクセスや旅行には不便?
始発列車のダイヤを見ると宇都宮線の普通列車の始発列車には接続していません。
宇都宮線の始発列車は東京方面の列車が最も早く、4時37分発の列車となっていますが、これには間に合いません。
始発列車に乗ると東京駅に6時25分に到着する列車となっており、午前中から大阪方面に旅行が可能です。
また、飛行機も午前中の便に乗ろうとすると遅延などのリスクも考え、この時間くらいから出発するのが一番有効に時間を使えそうですが、残念ながら、宇都宮駅到着時間は6時ちょうどごろとなっています。
平石より宇都宮よりの市街地から始発列車に乗ったら、目的地にはどれくらいにつく?
宇都宮LRTがこのダイヤになったのは新幹線始発時間を意識してということです。
6時27分になすの254号東京行きがあり、これに時間に余裕をもって到着できるようにという配慮からでしょう。
東京駅には7時20分に到着します。
羽田空港までのアクセスであれば8時くらいには到着することができ、かなり急げば、9時前の飛行機に乗ることができるでしょう。ただ、余裕をもって移動するのであれば、10時くらいの飛行機に乗ることになりそうですね。
札幌に行く場合には到着は午後になってしまうでしょう。
大阪に行く場合は午前中に到着が可能で、東京駅7時30分発ののぞみ11号に乗れば、大阪駅には10時13分に着きます。
宇都宮LRTの終電は?各路線の最終列車は?
逆に宇都宮LRTの終電はどうでしょうか?
最終列車は宇都宮駅東口を23時1分(芳賀・高根沢工業団地行き)、23時46分発(平石行き)となっています。
宇都宮市街地に行ける最終列車はなすの281号があり、東京駅22時44分発宇都宮駅23時38分発があります。
新幹線を使わない場合は東京駅21時45分発の普通列車宇都宮行きに乗車して、宇都宮駅23時39分着の列車があります。
芳賀町へ行く最終列車は東京駅20時49分発の普通列車が宇都宮駅22時42分に到着する列車があります。
新幹線はなすの277号が東京駅22時00分発宇都宮22時53分着があります。
慣れている人であればギリギリ間に合う時間でしょう。
このダイヤは開業時の暫定ダイヤにおけるものであり、2024年春以降に予定されている本格ダイヤではまた変わるかもしれません。
まとめ
ここまで宇都宮LRTについて解説してきましたがいかがでしょうか。
こちらの動画でも解説しきれなかった現地の様子を動画でお楽しみいただけるほか、車両などについても詳しく説明されていますので、併せてご覧ください。
運行初日の記録もリンクを張っておきます。是非ご覧ください。