今回は、京急久里浜線について紹介します。
京急久里浜線とは?運行区間・停車駅は?
京急久里浜線は神奈川県横須賀市にある、京急本線・堀ノ内駅から分岐し、三浦市の三崎口駅までの13.4kmを結ぶ路線です。
ただし、京急本線の堀ノ内~浦賀間は支線のような扱いで、実質的に久里浜線は堀ノ内から先の本線の延長部のような扱いとなっています。(特に堀ノ内~京急久里浜間)
その理由としては本線の末端区間である堀ノ内~浦賀間にやってくるのはほぼ普通車、たまに特急といった感じであることが挙げられます。
一方の久里浜線にはごくわずかな普通車こそありますが、基本は快特や特急といった京急線における速達種別の列車が乗り入れています。
また平日の朝には「モーニング・ウィング号」、平日の夜間には「イブニング・ウィング号」と呼ばれる、ライナー的な役割を果たす列車も乗り入れます。
こういったことなどから、一般の方からすれば久里浜線のほうが本線と思われても仕方ないように思えます。
また、一部の快特や特急は泉岳寺駅より先、都営浅草線や千葉方面の京成線、北総線に直通し、新橋や東銀座、日本橋などの都心部のオフィス街の他、観光地として有名な浅草や東京スカイツリーがある押上などへ乗り換えなしで行くことができるほか、更に平日夜間帯の快特1本と、土休日早朝の特急2本だけとごくわずかではありますが、成田空港まで乗り換えなしで行く列車もあります。
京急久里浜線の停車駅は?
〇:停車 レ:通過 空欄:経由しない
駅名 | よみかた | モーニング・ウィング号 | その他列車 | 接続路線 |
堀ノ内 | ほりのうち | レ | 〇 | 京急本線 横須賀中央・横浜方面(大多数が直通) 浦賀方面 |
新大津 | しんおおつ | レ | 〇 | |
北久里浜 | きたくりはま | レ | 〇 | |
京急久里浜 | けいきゅうくりはま | レ | 〇 | JR横須賀線(久里浜駅) |
YRP野比 | ワイアールピーのび | レ | 〇 | |
京急長沢 | けいきゅうながさわ | レ | 〇 | |
津久井浜 | つくいはま | レ | 〇 | |
三浦海岸 | みうらかいがん | 〇 | 〇 | |
三崎口 | みさきぐち | 〇 |
京急久里浜線で見かけることのある車両は?
京急久里浜線を走る車両は京急の電車がメインです。
しかし相互乗り入れの関係で平日に都営浅草線と京成線の電車を久里浜線で見ることができます。
京急以外の車両の乗り入れは堀ノ内~京急久里浜間で、かつ夕方~夜間時間帯の乗り入れがメインとなります。
ただし平日朝1往復だけ都営浅草線の電車が乗り入れ、その時だけ地下鉄の電車が明るい時間帯に単線区間を走る光景を見ることができます。
なお、都営浅草線の車両は原則的に新型車両5500形のみ乗り入れ、2022年7月現在1本だけ走っている旧型車両の5300形は原則的に現在は乗り入れません。
京成線の車両は成田スカイアクセス線で主に使われる、オレンジ色の3100形または3050形が原則的に乗り入れます。
京急久里浜線で見かけることが可能な他社車両の時刻表
下り列車(2022年3月ダイヤ改正時点)
列車番号 | 種別 | 始発駅 | 行先 | 堀ノ内発 | 京急久里浜着 | 三崎口着 | 車両 |
730T | 特急 | 泉岳寺 | 三崎口 | 8:44 | 8:54(発) | 9:07 | 都営 |
1608T | 特急 | 神奈川新町 | 京急久里浜 | 17:33 | 17:39 | 都営 | |
1710K | 特急 | 泉岳寺 | 京急久里浜 | 18:32 | 18:38 | 京成 | |
1720T | 特急 | 印西牧の原(北総線) | 京急久里浜 | 19:34 | 19:40 | 都営 |
上り列車(2022年3月ダイヤ改正時点)
列車番号 | 種別 | 始発駅 | 行先 | 三崎口発 | 京急久里浜発 | 堀ノ内発 | 車両 |
931T | 特急 | 三崎口 | 京急久里浜 | 9:14 | 9:26(着) | 都営 | |
1809T | 特急 | 京急久里浜 | 印旛日本医大(北総線) | 18:08 | 18:13 | 都営 | |
2021T | 快特 | 京急久里浜 | 印西牧の原(北総線) | 20:08 | 20:14 | 都営 | |
2011K | 快特 | 京急久里浜 | 成田空港(成田スカイアクセス線) | 20:29 | 20:34 | 京成 |
※ダイヤ乱れ時など、まれにこれ以外の列車で乗り入れてくることもあります
京急久里浜線の延伸計画とは?
京急久里浜線は1975年に延伸開業した三浦海岸~三崎口間を最後に、路線の延伸が止まっています。
しかし三崎口駅の先にも線路は続いており、これはかつて三崎口駅から先、延伸計画があったことを物語っています。
どこに延伸する予定だったのかというと三浦市の三崎地区中心部や、油壺地域に延伸する構想があったそうです。
これは、京急久里浜線の前身であった湘南電気鉄道時代から計画されていたもので、当時の湘南電気鉄道は浦賀から延伸する形で三浦半島を一周する路線を計画。
三浦半島を一周する途中の長井で三崎港付近に分岐する支線も計画し、1923年にそのための地方鉄道免許を取得していたそうですが、
当時の三浦半島は旧日本海軍、陸軍の施設が多くあったので延伸はできませんでした。
結局、太平洋戦争の真っ只中の1942年に大東急の路線となり、東急湘南線として横須賀堀ノ内~湘南久里浜間が1942年に開通。
日本の敗戦後に東急湘南線は京急久里浜線となり、日本軍施設が撤退したことで三浦方面への延伸への体制を整えます。
この時湘南電気鉄道が持っていた免許を活用し、マグロで有名な三崎港付近に「三崎駅」という駅を建設する構想を抱いていました。
京急久里浜線は1963年に路線名でもあり、当時の終着駅であった京急久里浜から野比まで延伸したのを皮切りに三浦方面に順次延伸。
1966年には三浦海岸まで延伸し、次に三崎方面へと延伸する計画が立ちました。
当初の延伸計画と延伸計画の中止
三崎方面の延伸計画のルートはというと当初、三浦海岸~三崎間となっていました。
しかし当時から三崎港付近用地がほとんど住宅地となっていた関係で、用地買収が難しく1970年に三崎までの建設を断念。
途中の油壺~三崎間の免許を取り下げ、延伸区間を三浦海岸~油壺間に短縮しました。
この油壺の地には1968年に水族館「京急油壺マリンパーク」が開業。
それによって三浦海岸から先、油壺方面へ延伸の機運が高まっていたそうです。
計画では油壺地区の東側にある丘陵地帯、小網代の森の近くに駅を設けたうえで、駅付近にバスターミナルを設置し、住宅団地を併設、さらに油壺 地区、小網代地区の道路も整備される予定だったそうです。
が、実際には油壺へと延伸することはできませんでした。
国道134号線との交点であるところまで用地の買収はできていたので、1975年にこの場所まで延伸し、仮の三崎地区アクセス駅として、三崎口駅を開設。
三浦市内の三崎地区や油壺方面へは、三崎口駅からバスでのアクセスとなりました。
結局、その後も油壺へは延伸できず、最終的には三崎口が正式な終点となったのです。
なぜ延伸しなかった?
油壺地域への延伸計画が果たせないまま終わった京急ですが、延伸を果たせなかった最大の理由としては、当時の沿線住民からの反対にあったのが最大の理由です。
三崎口以南の用地買収に当たっていた1985年頃までは、ちょうどバブル景気前で地価が上昇していた時期です。
この時期は「不動産神話」という「不動産が絶対」という一種の安全神話のようなものが信じられていました。
そのため、京急は沿線の農家へ価格交渉しましたが、ほとんどの農家は京急の価格とこの地区に京急が通ることに難色を示したそうです。
都心方面に力を入れたことも影響?
また、京急としても三浦海岸開業後は三崎方面への延伸を優先していません。
その理由としては、都心側へ力を入れていることも挙げられます。
1968年に品川から泉岳寺へと本線を延伸し、現在の都営地下鉄浅草線や、京成線への相互乗り入れが始まったことで、東京都心方面を重視するようになりました。
さらに、1993年に穴守稲荷~羽田間で空港線が延伸し、1998年には羽田空港のターミナル直下の羽田空港駅(現:羽田空港第1・第2ターミナル駅)まで乗り入れるようになり、2010年には羽田空港の国際化と同時に、羽田空港国際線ターミナル駅(現:羽田空港第3ターミナル駅)が開業したことで、訪日外国人旅行者も京急を使うようになりました。
都心側のターミナル駅の品川も2003年に東海道新幹線の駅が開業、2015年に上野東京ラインが開通し、将来的にはリニア中央新幹線の始発駅となるため発展の大きい開発可能な土地となりました。
これら都心側の充実は、今更人口減少が激しい三浦地区の開発をする必要をなくしてしまったことにもつながると考えられます。
今後京急久里浜線が油壺方面へ延伸する可能性はある?
さて、免許の取り下げと延伸計画自体が凍結となってしまった、久里浜線の油壺延伸計画ですが、今後も延伸の実現性はあるのでしょうか。
結論から言ってしまうと、現在延伸の実現性は皆無に等しいです。
三浦半島地域の過疎化
沿線である三浦市の人口減少は1996年から現在に至るまで著しく、2021年現在では約4万人程度の人口です。
ここからさらに人口減少は続き、9年後の2030年には3万8000人にまで人口が減る予測がされています。
更に高齢化率は42%にまで高まるのではないかと予測されていて、神奈川県内の市で唯一「消滅可能性都市」にも指定されています。
また、三崎口駅のある初声町より南、つまり三崎港付近の三崎駅が建設される予定だった三崎町は、人口減少が特に著しくなっております。
そして、人口減少と新型コロナウイルス感染症の感染拡大や、それに伴う外出自粛などの影響により利用客が減少していることから、
平日の日中時間帯に2021年10月から久里浜~三崎口間で減便が行われ、それまで10分に1本だったものが20分に1本になっています。
そして、今から人口減少地域である油壺方面へ延伸しようとしても、利用客がいるのかどうかというと、微妙なところです。
現に2016年に計画が凍結になった理由としては先述した通り、三浦市の人口減少もそうですが、
地域住民の高齢化や地価の下落などを踏まえて、油壺延伸計画を凍結したのが理由の一つです。
また、2021年に京急の水族館である「京急油壺マリンパーク」が閉館し、この油壺地域へやってくる観光客も減少しています。
経路に自然保護区域がある
また、経路である小網代地区には先述した「小網代の森」と呼ばれる森があり、さらにこの小網代地区は自然保護区域、つまり風致地区に指定されています。
風致地区では建蔽率、つまり敷地面積に対する建築面積の割合が決められています。
さらに建物の高さ制限なども決められており、三浦市全体でも風致地区が半分近くを占めているのが現状です。
実際、自然保護団体から建設反対の声も上がっていたそうです。
まとめ
ここまで解説したことを簡単にまとめます。
- 京急久里浜線の概要
- 京急久里浜線で見かけることのある車両
- 京急久里浜線の延伸計画
- なぜ油壺方面へ京急の延伸が叶わなかったのかについて
以上のことがわかったのではないかと思います。