京成押上線という路線をご存じでしょうか?
東京都墨田区押上駅と東京都葛飾区青砥駅を結ぶ路線です。
京成の路線の中で比較的「マイナーな路線」で知名度も低いことがうかがえます。下町情緒あふれるレトロな街並みを電車が駆け抜ける路線です。
原則として8両編成で運転されています。
この記事ではなぜ京成押上線は開通したのか、知られざる京成押上線の歴史、特徴、停車駅、種別なども解説していきます。
京成押上線とは?運行区間と運転間隔・特徴について解説
京成押上線とは東京都墨田区押上駅と東京都葛飾区青砥駅を結ぶ全長5.7kmの短い路線です。
運転間隔は普通列車が日中は10分間隔、平日朝夕ラッシュ時には5分間隔で運転されます。そのほか、特急・アクセス特急・快速特急・快速などが運転されており、優等列車も同じ運転間隔で運転されています。
押上駅で都営浅草線・東京メトロ半蔵門線・東武スカイツリーライン、青砥駅で京成本線に乗り換え可能な通勤路線です。
運用車両は京成3000形車両の他、京急600形、1000形など相互直通運転を行っている他社車両も使用されています。
京成押上線と案内されることが少ないことから、知名度が低くそれゆえに住みやすい路線になっているのも特徴です。それについては後ほど解説します。
まずは「押上までという中途半端な路線」がなぜ作られたのか?歴史について解説していきます。
京成押上線の歴史 実は会社創設当初から存在する路線
京成押上線は現在「支線扱い」となっていますが、実は会社創設当初は「本線」としての役割を果たしていました。
時代は大正時代、1912年までさかのぼります。この年は4月にタイタニック号が沈没した時代です。
京成電鉄は「京成電気軌道(以下、京成電鉄として紹介します)」という鉄道会社から始まりました。「軌道」というのは分かりやすく言えば路面電車のことを指し、運行開始当初は京成立石付近は路面電車のように市街地が併用軌道となっていました。(のちに現在のルートに変更)
開業は1912年11月3日、現在の押上~高砂~柴又・江戸川間が第一期線として開業します。
つまり、路線の大部分は現在は支線扱いされてしまっている「京成押上線」「京成金町線」となっていて高砂~江戸川間のみが本線でした。※開業当初は青砥駅は存在しませんでした。
京成押上線はなぜ作られたのか?
なぜ京成線は押上までしか路線がないのに、会社設立当初から路線が存在したのでしょうか?
実は本来押上から先に延伸される予定だったのです。まず最初に計画されていたのは「浅草乗り入れ計画」です。
都心乗り入れをできていなかった京成電鉄は浅草に乗り入れることを目論んでいました。しかし、この時は浅草に乗り入れようとしていた東武と競争することになり、このことを「浅草戦争」と呼ばれることがあります。
鉄道路線ができる際に「路線免許」が必要となりますが、当時「路線免許」を先に取られてしまうと、あとから申請すると却下されることが多かったようで、どちらが先に取れるのか東武と競願していました。
その後、東武に浅草乗り入れを先に越され、都心乗り入れを焦った結果、東京市会を収賄を行い、「京成電車疑獄事件」となり、浅草乗り入れが事実上断念する形となりました。1928年9月のことです。
このことは京成押上線を建設した時から想定されていたため次の手として、都電乗り入れを果たす計画もありましたが、これも川の改良工事などから断念。
のちに都心乗り入れは「京成本線」によって達成されることとなり、ついに京成押上線は都心乗り入れができない「盲腸線」となってしまったのです。
※その後向島駅から分岐し、白髭線という路線を開業させ、現在の都電荒川線三ノ輪まで延伸する計画もありましたが、一部開業のみでのちに廃止になるなど迷走していました。
京成押上線を「押上」を起点にした理由は?
京成押上線はなぜ「押上」を起点としたのでしょうか?
理由は大きく4つあります。
- 現在の総武快速線両国駅圏内を避けるため
- 浅草乗り入れをするため
- 都電へ乗り入れるため
- 浅草・上野へ便利だったため(当時は鉄道がなかったので、乗合自動車・タクシー事業があり、その名残が帝都自動車交通が京成の子会社となっている一つの理由です。)
戦後「盲腸線」から主要路線への奪還 結果として浅草乗り入れを果たす
そんな京成押上線ですが、戦後転機が訪れます。都営1号線(浅草線)計画です。
京成が都営に話を持ち掛け、結果として都営浅草線・京急線との3社相互直通運転が決定します。今では当たり前の相互直通運転ですが、当時日本の鉄道史上初の実施でした。
都営浅草線乗り入れを行ったことで、結果として浅草まで乗り入れたことと同じ意義を果たせたのではないでしょうか?
これにより「盲腸線」から「都心アクセス」「空港アクセス」へ重要な役割を果たすようになります。
京成押上線の今後
京成押上線は今後押上~青砥間の高架化工事(一部完成)が行われる予定です。特に京成立石付近では葛飾区役所移転も行われるため街並みが一変しそうです。ただし、計画に遅れが出ておりもう少し先の話となりそうです。
京成押上線の種別・停車駅
駅名 | 普通 | 快速 | 快速特急 | 特急 | 通勤特急 | アクセス特急 |
押上 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
京成曳舟 | 〇 | – | – | – | – | – |
八広 | 〇 | – | – | – | – | – |
四ツ木 | 〇 | – | – | – | – | – |
京成立石 | 〇 | – | – | – | – | – |
青砥 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
京成押上線の停車駅は押上(おしあげ)⇔京成曳舟(けいせいひきふね)⇔八広(やひろ)⇔四ツ木(よつぎ)⇔京成立石(けいせいたていし)⇔青砥(あおと)です。
まとめ
いかがだったでしょうか?ここまでの内容をまとめると
- 京成押上線は元々は「本線」だった
- 京成押上線を巡っては京成電鉄の様々な苦悩があった
- 押上を起点としたのには理由があった
以上のことがお分かりいただけたかと思います。
気になった方は沿線を巡ってみてもいいかもしれませんね。